第163回直木賞受賞会見(全文)馳星周さん「G1レースを勝ったように喜んでくれて」
故郷での受賞の知らせは不思議な縁では
北海道新聞：北海道新聞の大原といいます。受賞おめでとうございます。 馳：ありがとうございます。 北海道新聞：受賞作の『少年と犬』は不思議な縁というのを描いた作品ですけども、今回、7回目という、いろんな場所で受賞の知らせを待っていたと思うんですけども、故郷の北海道、それも浦河で受賞の知らせを受けたのも、何か不思議な縁だと感じているんですけども、そのことについてはどのように思われますか。 馳：もう7回もノミネートされて、要するに6回落選してるわけなので、もう別に身構えて受賞を待つとか、そういうことはもういいので。で、ちょうど本当に去年から夏を、生まれ故郷の浦河で過ごすようになっていて、そのときにたまたま今回また直木賞の候補になったということで、だったら浦河で受賞を待つというのもありじゃないかなと思い。もちろん今コロナとかがあるので、東京に行くのもいかがなものかっていうのもあったっていうのはあるんですけど、なんか巡り合わせとして面白いんじゃないかなと思って、生まれ故郷で合否を待つっていうのも面白いかなと思って、浦河で待つことにしました。 北海道新聞：相当、地元の皆さんも喜んでおられるように思うんですけども、どのようでしたか。 馳：もう、めちゃくちゃ喜んでいただいております。ありがたいことです。 北海道新聞：じゃあリラックスして受賞を待たれていたという感じだったんですか。 馳：一応、皆さんには、もし落選しても落ち込むのだけはやめてくれと伝えてありましたので、すごくリラックスして待ってました。 北海道新聞：すいません、ありがとうございます。 馳：はい。 司会：ありがとうございます。続き、ほかにどなたか。はい、じゃあお願いいたします。
どのような思いで地震を書いたのか
西日本新聞：西日本新聞の平原と申します。今回、熊本地震、また東日本大震災について書かれていますが、どのような思いで書かれたのか。また、取材に現地に向かわれたのか。そして、今回の熊本の豪雨についても思うところがありましたら教えてください。 馳：東日本大震災については、実際に震災のあと何カ月もたってからですけれども、現地に行ってみて、その惨状のひどさに声を失いましたし、熊本の地震のときはたまたま、あのときは取材で四国にいたのかな、ものすごい携帯のアラートが鳴って何事だと思ったら、あとでニュースを見たらすごいことになってるとか。今回の豪雨とかもありますけども、もう、この自然災害というのが日常になりつつあると。 それはたぶん、僕たち、今の人間の暮らし方に起因してるんじゃないかなっていう思いがあるので、それはたぶん、今後もいろんなことで書き続けていくとは思うんですけれども、なんだろうな、今回のコロナで自粛することによって地球の環境汚染が減少したとか、そういう事実もありますので、やっぱり、俺たち人間はどうこれから生きるべきなのかなっていうことを考えながら、これからの小説も書いていくんだろうなとは思っています。 西日本新聞：ありがとうございました。 司会：ありがとうございました。では。お願いいたします。
