横浜DeNAラミレス監督が主将&4番の「帝王学」を伝授した”首位打者”浮上の佐野恵太が暴れて通算300勝達成
ダメ押しも佐野の一発だった。8回一死。変則左腕の浜田に頭付近への抜け球があり、打席で転倒した直後の球である。佐野は、臆することなく踏み込んでバットを振り下ろすと打球はバックスクリーンの左へ。勝負を決める6号ソロである。 「風が押してくれた。昨日も対戦した左のサイド。これからも対戦が増えてくると思う。その中で1本打てたのは良かった」 筒香嘉智のポスティングによるメジャー移籍が発表され、ラミレス監督は、“ポスト筒香”として新主将&新4番に迷うことなく佐野を指名した。昨年には89試合に出場して打率.295、5本、33打点の成績を残してはいたが、実績としては足りず、勝負どころでの弱さも目立ち、“大いなる賭け”ではあった。しかし、ラミレス監督は、以来、機会があるごとに、技術指導と共に主将&4番の帝王学を佐野に伝授してきた。特に口を酸っぱくして説いているのが主将の心得である。 「キャプテンは孤独になってしまいがちだ。誰も何かを言う人がいない立場。結果が出ていると(そういう気持ちを)カバーできるが、調子が悪くなったときに、どう振る舞うか、いかにポジティブになれるかが必要になる。彼もキャプテンは初めてで、どうすべきか、どうあるべきかがわからず学んでいる途中。こうあるべきだ、というキャプテンの考えを少しずつ教えている」 佐野もラミレス監督のポジティブなアドバイスが成功の要因だと感謝している。 「毎日、声をかけてくれてポジティブなアドバイスをくれるので助かっている。打てなかった次の日もポジティブなアドバイスをくれるので精神面で(うまく)試合に挑む準備ができている」 この日も、ラミレス監督は、試合前の打撃練習中に佐野をつかまえて「両方の腕の使い方がいいね。だから今の安定した結果が出ているんだよ。それを続けよう」と、その長所を“褒め殺し”にしていた。具体的には、「腕、肘の出方、手首の返しがうまくできているのでインサイドアウトにバットのヘッドを使えている」という。 3安打の固め打ちで佐野は堂林を抜きセ・リーグの首位打者に立った。 「打率は、高いにこしたことはないと思うが、まだまだ今日で3分の1が終わったところなので」 浮ついたところのまったくない佐野は、好調理由を「毎日、丁寧な打撃練習ができていることで高い打率を維持できている」と自己分析した。 佐野が、技術的に優れている点は、ボールをコンタクトするポイントの近さだ。前さばきではなく、体の近くにボールを引きつけ、軸をぶらさず鋭い回転力と右足の強い踏み込みで高速スイングする。ラミレス監督が絶賛する腕の使い方で脇が締まることでスイングにブレが生じない。ミスショットが減り、当然、ボールを引きつけるので見極めができ、出塁率が.419(リーグ4位)と高く、三振数も「19」とクリーンナップを任されている選手の中では目立って少なくなっている。