隆盛スマホゲーム その歴史と現実は?
売上高は前年比で約880%――2014年11月7日、ソーシャルネットワークサービス「mixi」を運営するミクシィは四半期の連結業績を発表した。だが、この数字に市場からは不思議なほどに驚きの声は上がらなかった。すでに、この好業績をけん引するスマホゲーム『モンスター・ストライク』のダウンロード数の伸長が伝えられていたからだ。 数年前に一世を風靡したSNS「mixi」の業績は現在も相変わらず奮わない。その一方で2013年秋の『モンスターストライク』リリース以降、ミクシィの株価はストップ高を続け、遂に時価総額は当初の20倍以上となる4500億円にまで膨れ上がった。ミクシィは上場直後における時価総額ですら1000億円台だった。たった1年の間に一つのゲームが、社会現象にまでなった「mixi」を遥かに超える価値を生み出したのだ。 この『モンスターストライク』のように、一つのゲームが企業の業績をガラリと変えてしまうのは、スマホゲームの世界ではもはや珍しくはない。例えば、人気アプリ『パズル&ドラゴンズ』をリリースしたガンホーは、2012年の1年で、営業利益が前年の8倍近くに膨れ上がった。さらに翌年4月には時価総額が1兆円に到達、大きく話題を呼んだ。他にも、音楽ゲーム『ラブライブ』で業績をV字回復させたKLabや、東証上場が先日発表されたGUMIなどのように、ゲーム部門のもたらす莫大な利益によって短期間に業績が大きく変わった。 なぜこれほどスマホゲームは儲かるのか。そして一体、どういう成り立ちで登場した業界なのか。今やテレビCMで目にしない日はない、このゲームジャンルの歴史を紐解いてみよう。
日本のスマホゲームはどこから来たのか
スマホゲームと呼ばれるゲームたちの原型となったのが、スマートフォン以前の携帯電話において遊ばれていた「ソーシャルゲーム」である。その画期となったのは、2010年の後半からSNS事業者のグリーが本格的に仕掛けていった、カード収集を中心に据えて遊ぶソーシャルゲーム(以下、「カード型」と呼ぶ)の登場である。 しばしば、ソーシャルゲームの歴史の起源として語られるのは、2009年頃にFacebookで流行していたジンガ(Zynga)というゲーム会社の『Mafia Wars』や『Farm Ville』などだ。確かに日本の黎明期には、これらに影響を受けた『怪盗ロワイヤル』というユーザーが宝を奪い合うゲームや『農園ホッコリーナ』という自分の畑を育てるゲームなどが話題になった。SNSに付随した課金ゲームに対して「ソーシャルゲーム」という名称が日本で使われだしたのも、この頃からである。しかし、ここには、「カードを収集して遊ぶ」という、後のソーシャルゲームの決定的な特徴がない。