ジャパンカップで起きた事故でますます世界から敬遠される日本競馬界
東京競馬場に10万人を超える来場者が詰めかけたジャパンカップ。11月30日。大歓声の中、ゴール板を真っ先に駆け抜けたのは、スミヨン騎手が手綱を取った、4番人気のエピファネイアだった。 だが、その栄光の前に悲劇が起こっていたことを、瞬時に判断できたのは10万人の中でも、ほんの僅かでは無かっただろうか。 国際招待競走(輸送費や滞在費などの経費を、主催者(JRA)が負担する)ということで、アイルランドから遠征してきたトレーディングレザーが4コーナーで競走中止。右第1指骨粉砕骨折との診断がされ、予後不良となりホース生命を絶たれることになった。 「今回の事故は、日本の硬い馬場が招いた悲劇とも言えます」とはある馬主の言葉。東京競馬場の芝コースは、野芝に洋芝をオーバーシードした状態で、海外に比べ短く刈られ、また乾燥度が高いため、硬い馬場となっている。世界的な競馬の根幹距離でもあるマイル(芝1600M)、クラシック(芝2400M)の世界レコードタイムは、日本で樹立されたことが、日本の馬場(芝コース)が硬いことを象徴している。 そういうスピードレースを可能にした一方で、「日本の馬場は世界的にも管理が行き届いており、冬場でも芝が枯れていないのは素晴らしいと思います。しかし高速決着となるレースが増えているように、馬場の硬さは解消されてはおらず、その弊害とも言える骨折、そして屈腱炎といった怪我で休養を余儀なくされるのは、我々にとっても辛いことです」(先程の馬主)というような弊害がある。馬場の改善についてはJRAサイドにも、幾度かにわたって持ちかけているが、なかなか要望が通らない現状が続いているという。 データ的にはレコードを樹立するような硬い馬場が、怪我や事故に直結するとは言えない。ただ、速いタイムで勝利した馬が、「レース後の反動」とも言われる著しい疲労などで、予定していたローテーション通りにレースが使えなくなる例は見られる。 迫力のあるレース、何よりも日本競馬を国際基準まで押し上げた要因として、「スピード勝負で戦えるサラブレッド」を、この硬い馬場が作り上げたという功績こそあるが、ジャパンカップの悲しい出来事があると、どうしてもその弊害に目が行ってしまう。