【結婚にまつわるモヤモヤ悩み】女性側が苗字を変え、仕事を変えてまで結婚する意味はある?
作家の山内マリコさんが2013年に現在のパートナーと交際を始め、同棲、結婚とステップを踏む中でどのように「家庭内男女平等」を獲得していったのか――。その様子を描いたエッセイ、『結婚とわたし』が、ちくま文庫として2024年2月に発売されました。今回は、SNSで募集した、読者からの結婚にまつわるモヤモヤに、山内さんならではのアドバイスをいただきました。 【写真】山内マリコさんが回答!「結婚」にまつわるモヤモヤ悩み
【お悩み1】 結婚には決め手が必要なのでしょうか。今のパートナーとはずっと一緒にいたいと思っているのですが、今はなんとなく一緒にいて、それが続いているという状態で、結婚に踏み切れずにいます。 【山内さんの回答】決め手はあとから見えてくるもの 山内さん: なんとなく一緒にいてそれが続いている…。あとから振り返ったときに、「あのときがいちばん幸せだったな」と思う時間になっていそうな響きですね。決め手も同じように、あとから「そういえば、あれが決め手になったな」っていうことが見えてくるものだと思うので、わざわざそれを求めたり、待ったりする必要はないと思います。それよりも日常の中で、自身のそういう気持ちも含めて二人で話し合えていることのほうが大事だと多います。 私が振り返って「あれが決め手だった」と思うのは、自分の経済的自立でした。逆に男性の場合は、自分の身のまわりの世話がちゃんとできるようになって初めて、結婚を考えるのがいいのかなぁと思います。 もし相手が、「おいしいごはんを作ってくれるから」とか「風邪をひいたときに看病してくれたから」とかいう理由を決め手に挙げるなら、「ノォ~!」。それは無料のケア要員を求めているだけなので。 【お悩み2】 なぜ女性ばかりが苗字を変え、仕事を変え、社会に抑圧されながら生きていかなければならないのでしょうか。それに関するパートナーの認識の程度によって、結婚生活そのものの質が変わってしまうこともつらく、悲しいです。 【山内さんの回答】パートナーが姓を変える、という選択肢を提示してみては? 山内さん: 結婚をそういう視点から考えると、本当に女性差別の温床というか、すべての問題の根っこだと思います。こういう問題に敏感であればあるほどダメージを受けてしまうものなので、結婚を考えている相手に「男性が女性側の姓に変える」という選択肢を提示して、「それでも私と結婚したいのか」と問うくらいのことはしてもいいんじゃないかなと思います。 相手がそこを真剣に考えてくれるかどうかが、今後の試金石になるはずなので。反応を見るだけでも、どのくらい旧来のジェンダー観に囚われているか、どのくらい女性側の負担に同情がある人なのかがわかりそう。 作家 山内マリコ 1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、 2012年『ここは退屈迎えに来て』 でデビュー。 著書に、『あのこは貴族』(集英社)、『選んだ孤独はよい孤独』(河出書房新社)などが挙げられる。そのほか、新刊小説『マリリン・トールド・ミー』が、河出書房新書から5月下旬発売予定。 撮影/Marisa Suda 取材・文/国分美由紀 企画・構成/種谷美波(yoi)