スマホやZoomで「オンライン果物狩り」からスタート 身近なデジタルとエンタメの魅力で新しい農業を体感
もちろん、10%農家では農業をビジネスとして成立させるのは難しいかもしれません。それを解決するのがテクノロジーの力です。 髙橋「これまでの農業は家族型経営でひとつの農家が種をまくところから販売するまでのすべてを担う『垂直統合型』でした。しかし、これからは農業にも水平分業が求められる時代です」 テクノロジーを活用して、農作業全体を可視化&データ化することで、誰でも気軽に農作業に参加できるようになります。 「今週末は近くの農園で収穫作業があるから、手伝おうかな」と思える仕組みを作る。そこからもしかしたら「農業って面白いからもっと本格的にやりたい」という人もでてくるかもしれません。 また、ある作業のエキスパートがその分野に特化したエキスパートとして働くというスタイルもあるかもしれません。 例えば、ぶどうの粒を間引く作業のエキスパートが、日本中のぶどう農園を回りながら、その作業だけを特化してやる、というイメージです。しかも、普段は別の仕事をしていて、その作業がある時期だけ農作業に従事するという働き方ができるかもしれません。 髙橋「これまでは、農業に興味関心はあるけれど、どうかかわればいいかわからない人が大半でした。農業とつながる『はじめの一歩』となる機会をできるだけ増やすことが、関係人口を広げていくことになります。 そういう仕組みをどんどん作っていくことで、新しい農業に挑戦したいという意欲あふれる若い農家も育っていくはずです」
スタートは「オンライン果物狩り」
関係人口を増やすうえで大事なのは、「エンターテインメント」だと髙橋さんは語ります。もともとノウタスはコロナ禍中の「オンライン果物狩り」からスタート。果物狩りが自宅で楽しめるというエンターテインメント性が世の中から大きな支持を集めました。
オンライン果物狩りと言っても、使うのはスマートフォンとZoomなど、既存のありふれたデジタルツールだけ。しかし、そういったごく身近なデジタルツールだからこそ、農家も簡単に取り入れることができたのです。 髙橋「農業のテクノロジーというとドローン技術やロボット技術など最先端のものがたくさんあります。もちろん、それらはこれからの農業にとって重要な技術ですが、大多数の農家が当たり前に使えるようになるまでには、もう少し時間がかかると思います。 そういう農家への選択肢として、今ある優れたデジタルツールをうまく農業に活用すればいいのではないか、と気づかされました」 このオンライン果物狩りから発展したのが、農業SaaS「クダモノガリプラス」です。予約、チェックイン、キャッシュレス精算などの一連をデジタル化したパッケージにすることで、農家は過大な投資をせずに観光農園を始めやすくなりました。