緩和ケアと終末期ケアの違いは?専門医が教える病棟を選ぶ際のポイント
今回、WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」で取り上げるのは「緩和ケアと終末期ケアの違い」について。質問者のご家族は「緩和ケア」という言葉に直面し、不安を感じている様子ですが…。当連載初登場の宇井睦人医師は、緩和ケアにも精通している総合診療医。緩和ケアや終末期医療の解説のほか、緩和ケア病棟を選ぶ際のポイントについても教えていただきました。 【動画】自分の親に寄り添うような介護サービスが好評。急成長の介護施設
悲観的にならず、QOL(生活の質)を上げるために寄り添って
Q:50代女性です。85歳になる母は心臓弁膜症と診断されて通院しています。先生からは「ご高齢なので、負担がかかる手術は避けて緩和ケアの方向で考えていきましょう」といわれました。納得はしているのですが、なんとなく治る見込みがないから?…と考えてしまうことも。よく「終末期ケア」という言葉も聞きますが、その違いがよくわかりません。ぜひ教えていただきたいです。また、緩和ケア病棟の選び方のポイントも知りたいです。よろしくお願いいたします! ――緩和ケアと終末期ケアに大きな違いはあるのでしょうか。 緩和ケアは、完治する見込みのない疾患を抱える患者さんやそのご家族の、肉体的・精神的つらさなどを改善するためのアプローチです。一方の終末期ケアもケアの仕方に大きな違いはあるわけではなく、医療者側も明確に分けて提供しているわけではないでしょう。どちらも「病気を治す」のではなく、QOL(Quolity of life;生活の質)を改善し支えてゆく、という目的は同様だと思います また、「緩和ケアはがん患者さんに提供されるもの」という誤解も非常に多いのですが、緩和ケア・終末期ケアともに、概念として対象となる疾患が限られているわけではありません(緩和ケアの診療報酬が付く疾患群としては、悪性腫瘍・心不全・AIDS(後天性免疫不全症候群)などがあります)。 ――緩和ケアの中の最後のほうに終末期ケアがやってくるということでしょうか? おおむねその理解でよいと思います。ただし、「緩和ケアは終末期だけではなく、診断時もしくは早期から提供されることが推奨」されていますので、一般的に終末期ケアよりも対象となる期間は長くなりますが、「緩和ケアは終末期に提供されるもの」と誤解されている方もとても多いですね。いずれにせよ疾患名や時期で明確に区別されるものではない、ということです。 相談者の方は医師から「手術は避けて緩和ケアの方法で考えていきましょう」と言われ、納得はしている一方で”治らないのだ”という現実にショックを受けておられるのかもしれません。もちろん完治の見込みがない現実を受け止めてゆく必要はあるかと思いますが、必要以上に悲観的にならず、お母さまの苦痛を予防して和らげるよう、しっかり支えていく方針と考えられるのが良いと考えます。