本屋にして福祉事業所「ててたりと」。「利用者」がつくる、とりたてて意味のある場所
すぐに腐らない「本」は、福祉の場所に向いている
弟が亡くなったのは寒さ極まる1月初めのことで、精神保健福祉士の存在を知ったのが2月。福祉士の養成学校が始まる4月は目前に迫っていた。しかし上司に相談したら「まずは受けてみては」と言われ、出願が間に合った学校を受験したところ、3月に合格通知が届いたそうだ。 「会社からは引き継ぎがあるので、4月末までは来て欲しいと言われました。だから学校には実質、GW明けから通い始めたことになります。約1年間で国家試験の受験資格を得て、試験に合格して精神保健福祉士となりました」 住まいと同じ川口市内にある、就労移行とB型の多機能型事業所の職員になった竹内さんは、支援員の生活相談や障害者雇用の採用面接の同行などに携わった。レストランや清掃などを幅広く手掛ける事業所の中で異動しながら、足掛け8年在籍。そんな中でこの先、どうしようかと考えるようになった。 「B型事業所はパンやクッキーなどを作るところも多いのですが、食べ物という特性上、売れ残りをどうしていくかということに課題がありました。また何年も修行したり、海外で修行したりという方が作ってらっしゃるお店にはかなわないことも多い。でも本ならすぐに腐ったりしないし、どこで買っても値段はもちろん内容も変わらない。だから本は、障害がある方や福祉の就労支援事業所で扱うのに向いているのではないか。そう思うようになりました」 とはいえ、実際に事業所を立ち上げるには資金はもちろん、本の仕入れ先の確保も必要になる。取次の大阪屋栗田(現・楽天ブックスネットワーク)に連絡したところ、親身に相談に乗ってくれた。金融機関から開業資金も借りられる目途がたち、自己資金を含めて何とか立ち上げが可能と思えるようになった。約1年かけて見つけた物件は元オートバイショップで、そのうち14坪を本の売り場としてイメージして設計したそうだ。 「駅から距離はありますが、川口からはもちろん西川口や東川口、蕨といったJRの各駅からバス1本で来られるので、実は意外に便利な場所だったことも、決め手になりましたね」