〈米国の対中強硬激化で起きる日本人への危険〉中国人と区別できない米国人、私たちができること
トランプ当選確定直後から、米国のアフリカ系の人々に人種差別的なショートメッセージが届けられるようになった。その文面は、「綿摘みに選ばれたので、近くのプランテーションに出頭するように」というような奴隷時代を想起させるものであった。選挙運動期間中からトランプ本人やその支援者が人種差別的な発言を繰り返してきており、当選したことでお墨付きを得たと受け止められたとみられている。 選挙運動終盤の10月27日にニューヨーク市のマディソンスクエアガーデンで行われた大会は、とりわけ差別的言辞であふれた。コメディアンのトニー・ヒンチクリフがプエルトリコを「ゴミの島」呼ばわりしたことは広く報道されたが、そればかりではなかった。ヒンチクリフは、ハイチからの移民がペットを食べているという誤った情報を繰り返し、また黒人とスイカを結び付けるというお決まりの黒人差別的表現を用いた。 元フォックスのキャスター、タッカー・カールソンは、ハリス候補のことを知能が低いと決めつけると共に、「サモア系でマレーシア系」と彼女のバックグラウンドを歪曲して伝え、大喝采を浴びた。他のマイノリティに対しても揶揄する発言が頻出し、それらが喝采を浴びた。
対中強硬派の政権人事
トランプ本人とトランプ支持者による差別的発言は広く知られており、トランプの当選によって、米国内の多くの少数者は不安におびえることになった。実際に選挙直後から大学キャンパス内などでの差別的出来事が報告されている。アジア系の学生の中には、コロナ禍で感じたアジアン・ヘイトを是とする雰囲気が戻ってきたのを感じると語るものもあった。 そのような中、トランプ政権の陣容は着々と固まりつつある。中でも目立つのが外交に関連する役職に対中強硬派が名を連ねていることである。 米外交の要となる国務長官にはマルコ・ルビオ上院議員が指名された。ルビオ上院議員は、上院外交委員会のメンバーでもあり、対中強硬派として知られている。中国の人権問題にも取り組み、ウイグル人問題に関して中国人高官の米国査証制限と米国内の資産凍結を主導した。香港の非民主化の動きに対しても中国政府を強く批判している。米外交専門家の中には、中国は米国の敵であるというのが彼の信念であると考える者もいるほどである。上院外交委員会のメンバーであるため上院での承認は確実視されている。 大統領補佐官(安全保障担当)には、マイケル・ウォルツ下院議員が就任する予定である。ウォルツは、下院チャイナタスクフォースのメンバーの一人で、連邦議会で対中国において最もタカ派的な議員とみなされている。2021年には、「米国は中華人民共和国と冷戦状態にある」と公言し、ウイグル人の「虐殺」に抗議して、翌年北京で開催予定の冬季オリンピックのボイコットを最初に訴えたほどであった。