〈米国の対中強硬激化で起きる日本人への危険〉中国人と区別できない米国人、私たちができること
見た目では日本人も中国人もわからない
40年前も今日もアジア人を迫害した米国人にとっては、日本人も中国人もどちらでもよかったわけだが、第二次世界大戦中、米国人が真剣に日本人と中国人を区別しようと試みたこともあった。日本は真珠湾を攻撃した憎き敵国であり、それに対して、中国はその日本と戦う米国の同盟国であったのである。 米国において中国人を迫害してしまうと、中国人のアジアで日本人と戦う心が削がれてしまうのではないかと危惧された。日本軍は米国人の人種差別をついて、中国人に対してあなたたちは米国人の同盟国だと思っているかもしれないが、米国人からは人種差別されており、その証拠に米国に移民することも帰化することもできないではないかというビラを中国大陸でまいて米国人をいら立たせていた。 そこで米国の雑誌は、日本人と中国人の見分け方という特集を組んだ。日本人と中国人の典型的とされる顔が大書され、目や鼻などの間隔の特徴などが分析されていた。しかし、その結果わかったことは、日本人と中国人の外見に決定的な違いは見いだせないということであった。つまり、努力して区別しようとしても一般の米国人には日本人と中国人の区別はつかないのである。
日本に居ると、どうしても日本が世界の中核といった感覚を持ちがちである。実際、国内総生産(GDP)は世界3位の規模であり、主要7カ国(G7)の一角を占めている。しかし、ここ30年の日本が世界に占める存在感の低下具合は極めて大きい。以前ほどの存在感はないのである。それに引き換え中国の存在感はよくも悪しくも急激に大きくなっており、同じ東アジアの国として日本と中国は我々が思っているほど区別されてはいない。
日本、日本人への理解を深めるには
今後、米中関係の展開次第によっては、米国における日系人や日本人ビジネスマンや留学生などの在住者、日本人旅行客などが被害にあいかねない事態に発展することが十分考えられる。コロナ禍でのアジアン・ヘイトの高まりの時期には、国際的な人の往来が大きく制限されていたので、アジアン・ヘイトの被害にあうのは米国在住者が中心であった。 現在は、国際線の便数もコロナ禍以前のレベルに戻っており、国際的な人の往来も回復している。大谷翔平の試合を見るためだけに、多くの日本人が米国を訪れているなど、コロナ禍とは大きく状況が異なるのである。 と、ここまで日本の存在感がないなどと書いたがそれは一般的な問題で、パーソナルな関係性があれば、日本と日本人に対する理解も全く変わってくるだろう。例えば留学生が、渡航先で交友関係を広げるような小さな積み重ねが一番大切なのかもしれない。そう考えると、留学生の減少を心配し、少しでも増やす努力を積み重ねるなどすべきであろう。 同様にインバウンドで来日する人々との接触も大事にすべきだろう。そのような日ごろの小さな接触の積み重ねが日本のグローバルな舞台での存在感につながっていくのではないだろうか。
廣部 泉