株式に対して約20年ぶりの割安水準になった米国債券、米利下げ前に考える債券ファンドへの投資機会
ただ、何十年にもわたる投資の歴史の中で、債券に投資するファンドがあり、米国以外の国々の株式ファンド、あるいは、株式と債券を組み合わせたバランス型のファンド、そして、リート(不動産投信)、金(ゴールド)や原油を投資対象にしたファンドなどが存在するのは、当然ながら米国株式が常にトップの運用成績をあげ続けてきたということではないからだ。市場環境によっては、米国株式よりも、債券や、その他の国の株式などがより高いパフォーマンスをあげることがあったため、様々な資産に投資するファンドが作られ、いまだに存続している。過去10年のように、「米国株式に投資していれば間違いない」という状態が延々と続いてきたのであれば、世の中の投資信託は米国株式に投資する投信だけになってしまっていたことだろう。
そして、この9月に始まる米国の政策金利の引き下げへの転換は、過去10年以上にわたって続いてきた「米国株式の時代」に変化をもたらすきっかけになるのではないかと考えられる。
たとえば、野村アセットマネジメントが8月26日に出した「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド」の臨時レポート「当ファンドの足元の運用状況」において、「米国債券は米国株式対比で約20年ぶりの割安水準に」と指摘しているところにも、変化の兆しがある。同臨時レポートがいう「約20年ぶり」の変化とは、「米国株式の益利回り(1株当たりの予想純利益を株価で割った指標)」と債券の利回りの比較で、足元で米国債券の利回りが約20年ぶりに米国株式の益利回りを上回ったという変化だ。そして、2000年以降、米国債券の利回りが米国株式の益利回りを上回ったタイミングから投資を行った場合、米国債券のリターンが米国株式を上回る結果になったと指摘している。
同臨時レポートによると、2024年7月末時点のように、米国債券と米国株式の益利回りの差が0.3%程度の水準で投資した場合、1年リターンでは米国債券が8.4%で米国株式はマイナス14.1%、3年リターンは米国債券が19.7%で米国株式は5.6%という成績だったという。このような過去の実績を踏まえると、今の時点で債券をポートフォリオに加えることは、米国株式を保有している投資家にとってはリターンの改善につながる可能性があるとしている。そして、世界の債券に戦略的に投資する同ファンドに注目するタイミングだと強調している。