バッシングから熱狂へ…斎藤知事への世論はなぜここまで激変したのか、“使われた”元局長のプライバシー
奥谷氏の母親はあらかじめ別の場所に避難していたが、恐怖に涙したという。さらに立花氏は「竹内(英明)と丸尾(まき)の事務所にも行きます」とも宣言した。 2人は百条委員会で斎藤知事を厳しく追及していたが、これが“犬笛”となったのだろう。凄まじい攻撃が竹内氏と家族に加えられ、生活が脅かされた家族の必死の懇願により、竹内氏は県知事選の翌日に議員辞職した。 こうして「世論」が作られていった。斎藤知事の不信任による出直し選挙は、斎藤知事の資質を問うものだったが、いつの間にか争点が自死した元局長のスキャンダルにすげ替えられたのである。斎藤知事は立花氏とは無関係を貫き、デマを訂正することはなかった。
■「兵庫県現象」は一過性のものではない もっともこれらは有権者が情報を求めた結果ともいえるのだ。しかしこれに応じるべきテレビやラジオなどの既存メディアは選挙の公正中立を尊重し、選挙期間のかなり前から自粛に入るところもある。要するに有権者が情報を十分に得られないのだ。だから、規制のないネットに走る。ネットには真偽不明の情報があるほか、マネタイズを目的として、よりセンセーショナルな内容になっているものもある。
ネット利用者のリテラシーは向上していると言われるが、中にはこうした情報を鵜呑みにしてしまう人もいる。だからこうした“真実”を報じないテレビやラジオ、新聞は悪だという結論になってしまう。 今回の「兵庫県現象」は一過性のものではない。すでに述べたように、今年の東京都知事選などで「作られた民主主義」は実現しており、来年の東京都議選、参院選挙と続くだろう。奇跡の再選を果たした斎藤県政も、これからどうなるか。日本の民主主義はいま、岐路に立っている。
(前編:斎藤知事「パワハラ問題」謎に包まれたままのこと)
安積 明子 :ジャーナリスト