バッシングから熱狂へ…斎藤知事への世論はなぜここまで激変したのか、“使われた”元局長のプライバシー
途中で選挙担当者が替えられたが、もう間に合わなかった。「稲村氏は外国人参政権に賛成だ」などのデマも流されたが、これへの対応も不十分だった。投票日直前に優劣は逆転。稲村氏の敗北の大部分は、”オウンゴール”によるものといえる。 ■作られるようになった「民主主義」 2013年に解禁されたネット選挙は、2024年に大きく変貌した。それは4月の衆院東京15区補選や7月の東京都知事選で見ることができる。ネットで注目された候補の演説には人が押しかけ、その様子を配信すれば、再生回数が稼げた。
動画配信のマネタイズの仕組みを利用して、配信者募集の広告まで登場した。AIで観衆を作り上げることにより、熱狂も演出できるようになった。まさに「作られた民主主義」の実現だ。 だが、視聴者側はそうした現実には気を留めない。「人間は見たいものに関心を示す」という事実を突いて兵庫県知事選に出馬したのが、NHK党の立花孝志党首だった。「自分の当選は求めず、斎藤氏の当選を目指す」と公言した立花氏の登場で、斎藤知事はますます勢いづいていく。
立花氏には、斎藤知事の右腕で、7月に辞任した片山安孝前副知事の「代理人」を称する県議が接触し、片山氏からの「手紙」と音声記録を渡している。「手紙」には、斉藤知事によるパワハラやおねだり疑惑についての告発文書を配布した、西播磨県民局長(当時)の公用パソコンには”不倫日記”が残されていたことが記されていた。 また、音声記録には県知事選への影響がないように秘密会とされた10月25日の百条委員会で、元局長のプライバシーに言及しようとした片山氏を遮る同委員会の奥谷謙一委員長の声が入っていた。
百条委員会は7月8日の理事会で、プライバシーに関する資料の開示を禁止していた。にもかかわらず、片山氏はそれを破って発言し、その音声記録を流出させたわけだ。 ■「片山氏VS.記者」の構図に 百条委員会での証言を終えた片山氏は、数名の記者からの質問を受けたが、この時の音声記録も外部に流出している。記者たちは片山氏がなぜ取り決めを破ったのかを問うたが、その意味を知らない第三者にとっては、「事実を述べる片山氏」VS.「事実を隠蔽しようとする記者たち」という構図にしか見えない。