なぜ箱根駅伝アンカーでの駒大“大逆転ドラマ”が起きたのか?名将「不思議な勝ち方を…」
「15km地点の給水をもらったとき、いつもならきつくなるのに身体が動いていたんです。これなら逆転の可能性があるかなと思っていました。20kmくらいですかね。監督の『男だろ!』という声が届いて、自分のなかでスイッチが入ったんです。監督の檄が飛んできた瞬間に動きが変わりました」 両者の差は御成門(18.1km地点)で47秒、馬場先門(20.1km地点)で15秒。石川はアームウォーマーを外して、攻め込んでいく。20.8km付近で小野寺に追いつくと、背後にしばらくついた後、一気にスパートした。 鶴見中継所で3分19秒あったビハインド。狙い通りの区間賞を獲得した石川がひとりでひっくり返した。駒大が華麗なる大逆転劇で、13年ぶりの総合優勝に輝いた。 これほどの大逆転がなぜ実現したのか。ひとことでいうとキャリアの差が大きかったと思う。 箱根駅伝96回の歴史で最終10区での首位交代は過去8回。最後に“逆転負け”を経験しているのが、77回大会(01年)の駒大だった。17秒差を順大に逆転されている。 しかし、その後は箱根駅伝で4連覇(02~05年)の金字塔を達成するなど、駒大は今大会の前までに学生3大駅伝で最多22回の優勝(出雲3回、全日本13回、箱根6回)を積み重ねてきた。そのすべてで指揮を執ってきたのが大八木監督だ。 一方、創価大は今回が4回目の出場で、出雲と全日本の出場はない。チームとしての成熟度がまるで違った。アンカー2人を比較しても、駒大の石川は前回も10区を経験。9位でタスキを受け取ると東洋大をかわして8位でフィニッシュしている。区間7位でまとめているが、早大に1秒差で競り負けた悔しさを味わっている。 「もう一度10区を走らせていただいたので、絶対に前回の悔しさを晴らしてやろうという思いで走りました」と気合は十分だった。一方の小野寺は初めての箱根駅伝。「初出場の緊張、優勝のプレッシャーなどがあったのかなと思います。体調的に問題はなかったんですけど、予想以上に体力を消耗していましたね。純粋に力がなかったと思います」と榎木監督は話している。 石川は1時間9分12秒の区間賞、小野寺は1時間13分23秒の区間最下位。復路は8~10区が向かい風になり、直射日光も強かった。この状況で“未経験”のアンカーが自身の力を100%発揮するのは難しかったといえるだろう。 それでも今回の経験は来年につながるはずだ。