ラグビー「東高西低」に終止符…なぜ天理大は早大を粉砕し悲願の大学日本一になれたのか?
歴史が塗り替えられた。 天理大学が11日、東京の国立競技場での大学選手権決勝で2シーズン連続17度目の優勝を狙う早大を55ー28で下し悲願の初優勝を決めた。 いつも冷静な小松節夫監督は、ここでも表情を崩さない。 「嬉しさが勝ちまして、勝って泣くということはなかったです」 関西勢が大学日本一になったのは、第19回大会から21回大会まで3連覇した同志社大以来36大会ぶり。さらに過去3シーズンの選手権王者は明大、早大、天理大と続き、帝京大の9連覇が止まった2017年以降は毎年異なるチームが王者になっている。 天理大は「東高西低」と呼ばれる潮流に風穴を開けたうえ、群雄割拠の機運も高めたのだ。指揮官はこうも続ける。 「関西のチームでも優勝できる。それを関西の学生たちにもわかっていただくことで、全体的なレベルも上がると期待しています」 一昨季に準優勝、昨季に4強と頂点に肉薄していたチームは、今季の準決勝から東京入りのタイミングを試合前日から試合前々日に変えていた。最後の軽い練習を都内でおこなうことで、少しでも環境へ馴化できると考えたからだ。 おかげで決勝当日も、小松監督曰く「実力を発揮できた」。小柄でもよく鍛えられたフォワード陣が1対1の局面、接点で早大のランナーを仕留め、押し返す。球を奪う。その流れで要所におけるスクラムを押し、多彩な攻撃オプションも披露した。 象徴的なプレーは、キックオフ早々にあった。 ハーフ線付近右で早大のカウンター攻撃へ対処するなか、プロップの小鍜治悠太が相手走者の球をもぎ取った。その“宝”をロックのアシペリ・モアラが譲り受けると、一気に前進。次はスタンドオフの松永拓朗が左中間のスペースへキックし、向こうの蹴り返しを経て敵陣22メートルエリア左でのラインアウトを得た。 「天理大らしいディフェンスをしたまでです。(味方のキック後は)しっかり上がって(列をなして)、早大のやりたいアタックをやらさんとこうと思っていました」 小鍜治がこう言えば、モアラはこの調子だ。 「あれは練習の時からずっと(イメージしていた)。小鍛治と2人でコミュニケーションを取っていた」 このシーンの約3分後、天理大はゴールラインと平行なパスによるラインブレイク、力強い突進の連続を経て7―0と先制した。