ラグビー「東高西低」に終止符…なぜ天理大は早大を粉砕し悲願の大学日本一になれたのか?
今夏は部内で新型コロナウイルスのクラスターが発生し、約1か月間の活動自粛を強いられた。シーズン前の練習試合も制限されるなど大きなハンデを背負った。しかし、ハンデを逞しく乗り越える態度なら既にインストール済みだった。 天理大は、そういう歴史を歩んだチームだ。 10月の交流試合、11月のリーグ戦では、1戦ごとに課題を抽出。選手間のコミュニケーションの良化、攻防のシステムのマイナーチェンジに繋げた。フィフィタは再三、「試合を意識して練習したい」と宣言してきた。 小松監督に至っては、選手権準々決勝で戦った流経大の攻撃の仕方に着目した。ただ78ー17で勝つだけでなく、学ぶ姿勢を覗かせた。 「(ゴールラインと)フラットに走り込むアタックをしていました。こちらはディフェンスを修正しながら、アタックでも流経大さんのいいところを採り入れ、もともとの天理大がやっていたようなフラットなアタックをしようと。そのあたりから、精度が高まった」 今年の4年生は2年時から選手権4強入り。あと一歩で優勝を逃してきた。特に松永、フィフィタらは1年時からレギュラー格。失敗という名の財産を積み上げてきた。小松監督は言う。 「昨日のミーティングでも学生たちが話しました。『自分たちには何があっても大丈夫。色んなことがある。ミスもある。トライも取られる。でも、そこで過去と同じように負けるか、そうではないか…』。修正力、崩れない強さを持っていた」 優勝の瞬間、涙を流さず「学生の笑顔、涙を見られて幸せ」と語った指揮官。この人の淡々とした「崩れない」姿勢が、学生たちの有事に「崩れない」姿勢を支えた。その結果として悲願の大学日本一があった。(文責・向風見也/ラグビーライター)