ラグビー「東高西低」に終止符…なぜ天理大は早大を粉砕し悲願の大学日本一になれたのか?
前に出る防御と接点への絡みは80分間を通して際立った。 小鍛治やモアラは以後も身体を当てまくった。都合4トライをマークしたインサイドセンターの市川敬太も、10点リードで迎えた前半27分頃に早大の展開を鋭い出足で止める。 続く28分頃には敵陣22メートル線付近右でラインアウトを後逸も、その後の早大の素早い展開を左タッチライン際で封殺。松永がタックルし、左ウイングのマナセ・ハビリ、フルバックの江本洸志がジャッカル。ここで得られた攻撃権は、得点板の数字を17ー7から22ー7に変えた。 フランカーで主将の松岡大和が「ディフェンスで全員が我慢した」と言い切る傍ら、早大のスタンドオフである吉村紘はこんな皮膚感覚を明かした。 「僕が(ボールを)持った時にはプレッシャーがかかっていて、(自身より)外側のオプションが消されているよう(に感じた)。僕の判断が遅れ、判断をミスした先の接点でプレッシャーがかけられ…」 好守で光った小鍜治は、先頭で組むスクラムでも魅した。 後半6分、敵陣ゴール前右で相手ボールの1本を押し返す。最後は天理大のスクラムハーフである藤原忍が、インゴールに転々とするボールへ飛び込む。直後のゴール成功で36ー7とした。 小鍛治は早大の組み合う瞬間の駆け引きに終始、手こずったというが、手応えも掴んだ。岡田明久コーチによる「(全員の背中を地面と平行にして)テーブルを作れ」というビジョンを、大舞台でも体現した。 「押したやつは、ヒットした瞬間に行けるなと思いました。僕らは固まって、低く、相手の重さに負けないようにしようとしています」 攻撃の華はシオサイア・フィフィタだ。 アウトサイドセンターに入り、身長187センチ、体重105キロの身体と持ち前の速さを活かしたランで何度もラインブレイク。さらには防御をひきつけながらのオフロードパス、大外のスペースへのロングパス、相手の背後へのグラバーキックを自在に操る。 昨年はスーパーラグビーのサンウルブズと契約し、動きの幅を広げた。一昨季のファイナルで痛恨の落球に泣いた本人は、こう笑う。 「(戦前から)勝てるとは思っていたんですが、自分がいらんプレーをしたら皆がしんどくなる…とも。できるだけ(周りを)うまく使ったりするのを、意識しました」