なぜ早大ラグビーは明大にリベンジを果たし11年ぶり16度目の大学日本一を手にすることができたのか?
第56回全国大学ラグビー選手権の決勝が11日、新装された国立競技場で5万7345人のファンを集めて行われ、早大が明大を45-35で下し、11大会ぶり16度目の大学日本一に輝いた。戦前は早大不利の声が大きかったが、早大は立ち上がりから攻守に鋭い出足をみせて前半を31-0とリード。後半に明大が激しく追い上げて5トライを返したが、早大が2トライを加えて逃げ切った。対抗戦で明大に敗れた早大はいかにしてチームをV字回復させたのか?
受け継がれている伝統の力
これが40日前、対抗戦の早明戦で7-36と完敗した同じ早大だろうか。アタックでは、スピードの乗ったランの波状攻撃で明大の守備ラインを突破し、守っては速い出足からのタックルで明大の突進を許さない。次々と、明大インゴールに走り込む早大。下馬評を覆し、前半戦はなんと4トライ4ゴール1PGの31点。しかも失点は0だ。 明大のフッカーで主将の武井日向は、「前半の大量失点からパニックとなった」と明かしている。 それほど早大の前半の40分間の強襲は素晴らしかった。 ラグビーは比較的番狂わせが少ない競技と言われているが、早大にその格言はない。過去にも、ここ一番で集中力を研ぎ澄まし、劣勢を跳ね返して勝った歴史がある。古い話で恐縮だが、1962年の早明戦がその象徴。当時、関東大学リーグも1、2部制を敷いており、前年2部に落ちた早大は、故・大西鉄之祐氏を監督に迎えて再建にのりだし、2部で優勝、早明戦は、1部優勝の明大との全勝対決となり2部の早大が1部の明大を17-8で破る“大波乱”を起こした。これを機に1、2部制が廃止になったのである。 伝統の力は脈々と受け継がれていた。 実は、監督就任2年目となる相良南海夫監督の早大学院高時代の恩師が故・大西鉄之祐氏なのである。「学生に主体性を持たせる」というラグビーを教えられ、それを早大監督就任と同時に教えのスローガンとした。新国立競技場でのラグビーの試合のこけら落しとなる歴史的な舞台、57345人の大観衆の前で40日前とは、まるで別のチームのような力強い戦いを見せた裏には、その「学生に主体性を持たせる」という伝統の力があったのである。 打倒・明大へ周到な準備を重ねてきた。本来はディフェンス重視型のチームだったが、「この選手権から攻め続ける方針に変えた」と相良監督。とくに対抗戦時は、ケガで欠場していた大型センターの中野将伍が復帰したことで展開へのバリエーションが増えた。突破力のある中野が縦を突き明大ラインを混乱させた。 昨年12月1日の対抗戦で敗れた明大戦から学んだことも多かった。 「1対1のタックルなど明治が当たり前にできることをウチはできてなかった」(齋藤直人主将)ため、この1か月間は練習時からタックルを全員意識しながらプレーしたという。