棒線二次加工業の加工賃引き上げ、一部店売りで進展も道半ば
冷間圧造用(CH)鋼線や磨棒鋼といった棒線二次加工業では、材料の大幅値上げに伴う価格転嫁とともに、二次加工の製造マージン(加工賃)引き上げが課題となっている。ここ数年にわたって加速したエネルギーコスト高の転嫁未達分とともに、今回は運賃や労務費など諸経費上昇分の価格改定も進めている。安定した品質の維持および迅速な輸送・物流までを一貫する価値の向上を巡り、二次加工賃の引き上げは急務の課題だ。 大手需要家の自動車メーカーでは、6月から日産自動車が支給価格の二次加工賃を最大トン当たり1万円引き上げた。加工賃の引き上げは2023年4月以来およそ1年ぶり。16年からの累計引き上げ幅は、伸線2回・熱処理2回のCH鋼線(コイルtoコイル)で2万8500円に達した。サプライヤーである棒線二次加工メーカーの製造コスト高や労務費、運賃などコストアップの一部を支援した形だ。 二次加工メーカーにとっては適正な製造マージンの確保に向け大きな前進となったが、その他自動車メーカーの追随は道半ば。トン数千円の加工賃引き上げにとどまっている。 一方、ヒモ付きと対極の店売りは、関東・名古屋で材料価格の上げ幅を上回る2万5千~3万円の値上げが浸透している。課題となる加工賃の転嫁が進んだ形だ。 政府はこれまでに「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」を策定。原材料やエネルギーコストの転嫁要請や、物価高を上回る所得増を目指す労務費の転嫁を促し、大手企業の取引適正化に向けて不適切事例への監視の目を強めてきた。 労務費についても「物価高を上回る賃上げ」を後押ししており、23年11月には「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を取りまとめ、発注者と受注者の双方に行動指針を示している。 鉄鋼メーカーや需要家に比べ中小企業が多い二次加工メーカーは、熱処理や伸線加工、表面処理、精密な切断や迅速なデリバリーなど、特殊鋼のサプライチェーン全体の付加価値向上の一翼を担う。高品質製品の安定供給体制を維持し続けるためにも、適正な製造マージン、運賃と労務費の上昇分の原資を獲得する商習慣への転換が急がれる。