【ソフトバンク】OBが語る小久保ホークスが優勝できたワケ 指揮官が「自分を変えた2年間」
2024年シーズンはシーズン91勝を挙げ、2位の日本ハムとは13・5ゲーム差をつける圧倒的な差でパ・リーグを制したソフトバンク。ここではダイエーで小久保裕紀監督(53)とプレーした経験もある本紙評論家の加藤伸一氏に、前半後半の2回に分けて小久保ホークス1年目を評してもらった。前半は小久保監督がうまくチームづくりをできた要因について聞いた。 【加藤伸一・インハイアウトロー】今年の結果は小久保監督自身が努力して選手の目線に立ち、円滑なコミュニケーションを取れたことにあると思う。ヘッドコーチ時代は言っていること、やろうとしていることは決して間違っていなくとも元々持っている厳しさ、理想の高さが今の時代の選手とうまくすり合わせができていなかった。決して甘やかすわけではないが、自分の理想を押し付けるのではなくうまくコミュニケーション取りながらシーズンを戦えたことが優勝という結果を導いた。 その姿勢は春のキャンプにも表れている。本人の現役時代は夜遅くまで練習をする姿が目立ったが、監督になってからは全体練習は早めに切り上げ、選手の自主性に任せた。自身がやってきたこととは正反対、己の理想はあるだろうが今の時代にうまく合わせた一例だ。 その一方で監督として選手と一定の距離感を取りつつ、必要な怖さのようなものも持ち合わせた。選手というのは「本当にこの人についていって大丈夫なのか」とまず疑ってかかるものだ。選手から見られている中でベンチでもあまり喜怒哀楽を見せず隙を見せなかった。 指導経験なく、いきなり監督をやることは大変だ。引き出しがない上にいきなり優勝しろと言っても誰もついてこない。そういう意味では二軍監督の2年間でさまざまな目を養うことができた。四軍制を採用しているホークスでは支配下の70を見ていればいいわけではない。中間管理職でもある二軍監督は三軍戦も見ながら選手を使い育て、一軍からの要望も聞かなければならない。多くの目を養い選手との接し方を見つめなおし自分を変えた2年間の経験が今に生きているのだと思う。 監督1年目というのは首脳陣も選手も自然とピリピリするところがあり、それがいい緊張感につながる。2年目、3年目と変化がなくては悪い意味で「慣れ」が生まれてくる。25年シーズンは、変化した25年版の小久保ホークスが求められる。 (本紙評論家)
加藤伸一