ほぼ完全に実用レベルの電動バイク、エネルジカ「EGO+ IVYエディション」に試乗! 通勤もツーリングもイケる!! ※ただし700万円
【閑話休題】制御技術こそが最大のストロングポイント
IVYレーシング代表の金城さんにお話を伺ったところ、そもそもエネルジカ社はイタリア大手の風力発電会社の系列であり、電力の制御技術を磨くために電動モーターサイクルを製作したという変わり種らしい。 モーターとバッテリーはよほどの技術革新がなければ大きな進化はないが、制御技術はまだまだ磨ける──。そう考えたエネルジカ社は、電動四輪の10倍、スペースシャトルの5倍という精緻な制御が求められるモーターサイクル分野にチャレンジすることにしたのだという。挑戦の場は、MotoGPの電動バイククラス、Moto E選手権だった。 なぜモーターサイクルのパワーユニット制御がそれほど難しいのかというと、ひとつにはパワーに対する車重の軽さや、ライダーが上で動きながら操作するということもあるが、何より3次元的な動きをしながら走ることが大きい。 加減速で前後にピッチングし、曲がるために左右にロールするモーターサイクルは、常にその瞬間瞬間に最適な(もしくはライダーが望む通りの)パワーを過不足なく取り出せるように制御されている必要がある。バンク角によってタイヤの外径も変化すれば、荷重の載り方でグリップ力が変化したりもする。そんな様々な条件下でライダーの思い通りに走ってくれなければ速く走れないだろうし、何より面白くないだろう。 2019年から2022年までMoto Eに参戦したエネルジカは、もっとも厳しい場で制御技術を磨き、レーシングマシンのパワーユニットを搭載した車両に保安部品を取り付けて公道仕様に仕立て上げた。それがEGO+だ。
歩くような速度から240km/hまで(?)、スロットル操作ひとつでコントロール
話を戻すと、EGO+は人間が歩くような速度でもギクシャクせずにまっすぐ走り続けることができるし、環境が許せばスロットル操作だけで240km/hに設定された速度リミッターに当たるまで一気に加速することもできる……らしい。らしいというのは、今回は公道試乗だったのでさすがに最高速度は試していないからだ。 それはともかく、これほどの大パワーを誇りながら街乗りを気楽にこなせるのは、EGO+の大きな魅力。しいて言えば前傾ポジションがちょっとツライかもしれないが、なんなら同じパワーを誇るネイキッドモデルのEVA RIBELLEや、もう少し穏やかなアドベンチャーモデルのEXPERIA/ネオクラシックモデルのESSEESSE9もラインナップされている。 そんなこんなで、約700万円という価格さえ忘れれば、EGO+は全く問題なく通勤にも使えることがわかった。 さて、次はツーリングである。 日常的に使っているシーンを想定したかったので、特に満充電することなくスタートすることに。東京都台東区にある編集部ガレージ出発の時点で、メーター表示のバッテリー残量は79%だった。 首都高上野線に乗り、料金所から加速! ここでは周囲の流れも速いので、0-100km/h@2.6秒という加速力をよりリアルに体感できる。面白いのは、高周波サウンドが聞こえるとはいえエンジン車より圧倒的に静かなので、加速Gのわりにはあまり急加速している感じがしないことだ。ライダーに気づかせず制御も仕事をしているようで、挙動が乱れるような気配はまったくない。 ──クルージングは平和そのものだが、スロットルを開ければ必要なパワーはいつでも引き出せる。 本線への合流では、後方から近付いてきた四輪と同じ速度まで瞬時に加速。まるでずっとそこにいたかのように、交通の流れに溶け込むことができる。 キビキビとレーンチェンジをこなし、速度が欲しければスーッと加速、スロットルを戻せば自然なエンジンブレーキと同じような感じで回生ブレーキが利く。スロットル操作ひとつで狙った車線の、狙った場所に納まることができる。それにしても、これだけ速いバイクなのに急かされる感じが全くしない……。 ちなみにクルーズコントロールも装備しているが、速度変化の大きい首都高では使う機会もない。続く東名高速もそこそこ渋滞していたので、今回はわずかに試したのみだった。