ほぼ完全に実用レベルの電動バイク、エネルジカ「EGO+ IVYエディション」に試乗! 通勤もツーリングもイケる!! ※ただし700万円
びびるほど速いのに異次元のスムーズさ
まずはマシンをお借りしたところから振り返っていこう。埼玉県三郷市にあるエネルジカの正規代理店「金城IVYレーシング」にてEGO+ IVY EDITION(以下EGO+)を受け取り、簡単な説明を受けつつパワーモードをスタンダードにしてもらい、いざ出発である。 車重は260kgあり、スズキのハヤブサとほぼ同等。とはいえバッテリー&モーターの搭載位置により低重心なためか、跨って左右に振ると思いのほか軽い。ただし、押して歩こうとすると車重以上の重さを感じることになる。これは電動バイクゆえのモーターの微妙な抵抗によるものだが、こんな時に役立つのが低速モードだ。 ブレーキレバーを握りながらスターターボタンを押すとメーター左横に『Go』と表示され、走行できる状態になるが、さらにスターターボタンを長押しすると低速モードに入る。ようは歩く程度のスピードで後退と前進ができるモードで、跨ったまま簡単に車両を取り回すことができる。前進でスロットル全開を試したところ、最高速度は8km/h。なんならステップに足を載せて走ることもできる速度だ。 ライディングポジションはスーパースポーツのそれで、着座位置からハンドルバーはやや遠め。シート高810mmはさほど高くない部類だが、それなりの前傾姿勢が必要になる。 ──ハンドルバーはやや遠めだが、前傾姿勢は許容範囲。タンクに相当するカバー位置が高めなので、高速巡航では身体を預けて少し楽をすることができる。ステップ位置もスポーティだが窮屈というほどではない。シートは形状がよく、クッションの厚みはそれほどでもないが尻の痛みは我慢できる範疇だ。【身長183cm/体重81kg】 事前に2000ccエンジン並みの最大トルク215Nm(21.93kg-m)で0-100km/h加速が2.6秒とか、最高速240km/hといった情報が頭に入っていたのでおそるおそる走り出すが、拍子抜けするほどスムーズに走り出した。 クラッチやトランスミッションはなく、操作は右手でスロットルとフロントブレーキ、右足でリヤブレーキというシンプルな構成。車体は紛れもなくスーパースポーツだが、加減速に限って言えばスクーターと同じように操作できる。 周囲の交通の流れに乗っていると“キュイーン”という高周波サウンドも控えめで、停止すれば無音。乗用車のアイドリング音や、そよ風の音が耳に入ってくる。なんだかとても落ち着いた気分だ。 視界が開けた安全そうな場所で停止し、試しに元気よく加速してみることにした。 ……いや正直びびった。わかりやすく言うと1000ccスーパースポーツのフル加速がスロットル操作だけで出現するわけだ。ゼロ発進で右手をガバリと回すと、一瞬スムーズにホイールが転がりだすのだが、リヤタイヤに荷重が載ったと思ったらまっしぐらに加速力が増していく。 スゲェなと思ったのは、ジワリと回り始めたリヤタイヤに荷重をしっかりと載せたところから圧倒的な加速力を発揮するまでのシームレスな繋がりだ。フロントを浮かせることなく、リヤホイールがスピニングを起こさない最大限のパワーがよどみなく湧き出てくる。しかも、マンホールを乗り越える際に一瞬スピニングらしき“キュキュッ!”という音がするのだが、挙動は全く乱れず、タイヤが再度喰い付いたと思われる瞬間もショックレスなのだ。 モーターがゼロ発進から途方もないトルクを発揮するのは電動バイクでお馴染みのシーンかもしれないが、これほどスムーズに制御されているとは驚きだ。一般公道の60km/hまででも、鬼トルクと制御の素晴らしさの片りんを垣間見ることができた。