自分を否定してばかりの人も自分を愛せるの?「セルフラブ」の習得方法
ミレニアル世代とZ世代の女性たちは小さい頃から「自分を愛しなさい」と言われて育ってきた。でも、このセルフラブのムーブメントは、それ以前の世代の女性たちを冷たい人間にしてしまう。現に50代ライターのシェニア・タリオティスは、自分を強く批判しながら半世紀を生きてきた。 【写真】「自己肯定感」を高めるための方法 彼女にも、自分という人生でもっとも大事な人間との関係を修復することはできるのだろうか? 今回はこの内容をイギリス版ウィメンズヘルスからご紹介。
世界的な危機
約150年前、「自分にとって最大の敵はいつも自分。洞窟や森の中で自分のことを待ち伏せている」と言ったのは、哲学者のフリードリヒ・ニーチェである。この言葉の意味なんて分からないほうがいい。自分を大切にしている人は、自分で自分を待ち伏せるという考え方と縁もゆかりもないはずだ。 でも、2020年、ザ・ボディーショップの依頼を受けて市場調査会社のイプソスが行ったグローバル・セルフラブ・インデックスによると、自己破壊と自己嫌悪、自尊心の欠如は多くの人の行く手を阻む問題になっている。21カ国から2万2000人が参加して、自分の自尊心、レジリエンス、自信、他者承認に対するニーズを評価した同調査では、私たちが「世界的なセルフラブ危機」に直面していることが判明した。英国からの参加者の自己評価は下から数えたほうが早い。 このレポートの統計は憂慮すべきものである。回答者の約60%は「自分をもっと尊重したい」と思っており、半数以上は「人を喜ばせるためにハッピーなフリ」をしていて、半数近くは「自己愛よりも自己不信のほうが強い」と感じていた。 最高の時代に生まれて成人できる可能性が低いことは、みな身をもって知っている。中でも特にZ世代(1997~2012年生まれ)の回答者は自分を愛することに苦労していた。だからこそ、この世代は集団的な信任危機に対抗する手段として、セルフラブのムーブメントを積極的に受け入れてきたのかもしれない。 セルフラブは昔からあるコンセプト(詳細は後ほど)。でも、そのコンセプトが本格的に普及したのは、インターネットとSNSが進化してから。グーグルトレンドのデータによると、“セルフラブ”の検索件数は2006年から着実に増加している。2006年は、フェイスブックが大学生のみというユーザー制限を解除して、13歳以上の人全員に開放された年である。 それからの20年でセルフラブのムーブメントは爆発的に拡大し、現在インスタグラムにはセルフラブのハッシュタグが付いた投稿が1億件近くあり、そこにはボディポジティブから基本的なセルフケアに至るまで、あらゆるものが含まれている。 さらにはセルフラブデー(2月13日)まで制定されているけれど、私の世代でこの革命を知る人は少ない。たぶん私の世代は、それほどセルフラブを必要としていない。年を取ると、欠点、ぜい肉、失敗を含めて自分を受け入れるのが楽になる。グローバル・セルフラブ・インデックスでも、私と同じX世代(1965~1980年生まれ)でセルフラブ度が低いと回答した人は18%だけだった。 私の世代がセルフラブを追求しない理由は他にもある。セルフラブのムーブメントに役に立たない側面があると感じているのは、私だけではないだろう。その側面とは、このムーブメントが「自分を愛せない人に人は愛せない」と言い切っている点だ。優先順位や価値観が(欧米とは)異なる社会で育った人や、自分を愛さずに何十年も生きてきた人にとって、このような考え方は時に有害であり苛立たしくもある。