100年ぶりの大彗星になるか? 紫金山・アトラス彗星、日中にも見える可能性
現在、南半球では、太陽の陰から姿を現したばかりの彗星をアマチュア天文家たちが見守っている。観測の順番はまもなく北半球に回ってくるが、星空観察アプリのStar Walkが指摘するように、「紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)」はこの100年間に北半球で観測された彗星の中でも最大級に明るい彗星になるのだろうか。天文情報サイトのSky&Telescopeなどは、10月に入れば日中にも見えるようになる可能性があるとしているが、期待してもよいのだろうか。 まだ確実なことは言えないが、今週後半に北半球からの観測が開始されれば、さらに多くの手がかりが得られるだろう。 ■どこまで明るくなるのか 誇大にも思える前評判は、実態に基づいたものだ。宇宙天気情報サイトSpaceweather.comは、オーストラリアの天体写真家マイケル・マティアッツォの言葉を引用し、紫金山・アトラス彗星が急速に明るさを増していると伝えている。 マティアッツォは夜明け前の空に尾を引く白っぽい彗星の撮影に成功している。明るさは4.3等級と推定され、肉眼でも見える。こと座で最も明るい星ベガの絶対等級と同じ、0.6等級まで明るくなるとする予想もある。 「10月中旬の夜には、目を見張るような素晴らしい天体ショーが期待できるだろう」と、米アリゾナ州フラッグスタッフにあるローウェル天文台の天文学者チーチェン・チャンはSpaceWeather.comに語った。「天気さえ良ければ、北半球のどこからでも紫金山・アトラス彗星は見えるはずだ」 この彗星は崩壊寸前だと予測した科学者もいたことを考えると、これらは明るいニュースといえる。ただし、北半球にいる人々が肉眼で観測できる天体となるには、あともう1つ乗り越えなければならないハードルがある。 ■彗星の予測が難しい理由 9月27日、紫金山・アトラス彗星は近日点(太陽に最も近づく位置)に到達する。太陽からの距離は約5900万kmだ。このときが彗星にとって最も危険な時期であり、太陽の影響で分裂する可能性もある。彗星の状態、特にその明るさの見通しを予測するのが非常に難しいのは、そのためだ。 もし近日点を無事に通過できれば、9月27日から10月4日にかけて、紫金山・アトラス彗星は日の出前の東の低空、地平線に近くに輝いて見える。10月4日ごろ、彗星は太陽の光の影響でいったん見えなくなるが、この段階で観測に十分な明るさがあれば、10月中旬から再び壮大な天文ショーが楽しめるだろう。最もよく見えるのは10月10日~20日ごろとみられる。これは主に、彗星が10月12日に地球に最接近し、地球から約7100万kmの距離を通過するからだ。