トヨタGR豊田章男オーナーから“英語の勉強”を求められた坪井翔の胸中「今のいちばんの夢はF1のFP1を走ること。英語を勉強したい」。夫婦チャンピオンがかかる斎藤愛未を精神面で支える
2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権およびスーパーGT GT500クラスで“ダブルタイトル”を獲得した坪井翔。12月9日にはモリゾウことTOYOTA GAZOO Racingの豊田章男オーナー/トヨタ自動車会長から『そろそろ英語の勉強をしてもらった方がいいんじゃないかな』というお言葉を貰っていたが、自身の今の心境について聞いた。 【写真】KYOJO CUPに参戦する斎藤愛未と、国内ダブルタイトルを獲得した坪井翔ご夫婦のツーショット ■ダブルタイトル獲得で「今はいろいろな景色が見え始めている」 2024年のスーパーフォーミュラでシーズン3勝、表彰台4回を獲得してドライバーズチャンピオンを獲得した坪井は、スーパーGT GT500クラスでもau TOM’S GR Supraで山下健太とコンビを組み、最終戦鈴鹿の予選ポールポジションでチャンピオンを確定させると、決勝では今季3勝目を達成。宮田莉朋と王者を獲得した2023年に続く連覇を成し遂げるという、速さと強さをみせつけた年になった。 そのスーパーGT最終戦後の12月9日には、自身もレーサー“モリゾウ”として活躍するTOYOTA GAZOO Racingの豊田オーナーから『坪井はそろそろ英語の勉強をしてもらった方がいいんじゃないかな』というメッセージが発表された。そのことを坪井本人に改めて聞くと「やはり、英語を勉強することは大事だと思っています」と前向きに捉えているようだ。 「モリゾウさんから『英語を勉強しなさい』と言われている以上は、勉強をしようかなとは思っています。それがどこでどう活きてくるかはまだ分からないですけど“準備”という意味では、すごく大事だと思っています」 そう語った坪井は、自身の“今後の景色”について、これまでの思いを振り返りながら今の率直な思いを続ける。 「僕はずっと、日本でダブルタイトルを獲らないまま海外に行くつもりはこれまでなく、しっかりと日本の最高峰カテゴリーの舞台でダブルタイトルを勝ち獲ることができたら『その先の景色』が見えると思っていました。でしが、今年ダブルタイトルを獲得することができ、今はいろいろな景色が見え始めています」 「モリゾウさんからの『英語を勉強しなさい』というお話もそうです。また、自分自身『何のカテゴリーを目指すか』といったビジョンも少しずつ見え始めている部分もあります。そのため準備という意味でも、英語は必要になってくると思うので、メッセージをしっかりと受け止め、やっていきたいと思っています」 その坪井に『現時点で参戦してみたい海外カテゴリーはあるか?』と問うと「言っていいのかは分からないですけど……」と謙遜しつつ、幼少期からの夢を叶えるべく、レーシングドライバー憧れのあのカテゴリーへの思いを吐露する。 「僕の小さいころから、いちばんの夢はF1です。なので、ダブルタイトルのご褒美と言っていいのか分かりませんが、鈴鹿サーキットでのF1日本グランプリのフリー走行1回目で、F1マシンに乗りたいと今はいちばん思っています」 「僕も鈴鹿サーキットでのF1日本グランプリを見ていますし、スーパーフォーミュラ、スーパーGTでも走っているので、まったく知らないサーキットよりは、知っているサーキットで乗るほうが、よりクルマを感じることできると思います」 「そういった意味でも、F1マシンに乗るなら鈴鹿サーキットがいいですし、F1は小さいころからの夢だったので、その夢を叶えたいですし、その夢を叶えるために必要な成績は、今年手に入ったと思っています」 「もちろん“ご褒美”で乗せてくれるほど甘くはない世界だとは思っています。でも、少しでも今後の糧になるといいますか、小さいころの夢を叶えたいという思いはあります。そういったチャンスをいただくためにも、やはり英語力は必要なので、F1マシンに乗ることができるレベルの英語力は、しっかりと身につける必要があると感じています」 ちなみに、現時点の英語力は「もう全然ダメですよ」と苦笑いをみせた坪井。しかし「やはり『海外でレースをしたい』という欲があるなら英語は絶対にマストです。若干遅い気もしますけど、やれることはしっかりとやっていきたいです」と、改めて決意を述べた。 ■KYOJO CUP最終戦の週末は王者がかかる奥さまを全力サポート その坪井は、12月21~22日に富士スピードウェイで開催されているインタープロト/KYOJO CUPの最終大会に自身もスープラクラスのプロフェッショナルとして参戦しているが、週末はレースに加えてKYOJO CUPで“夫婦チャンピオン”がかかる妻の斎藤愛未選手を夫として、そしてニ冠王者としてサポートする。 「ドライビング技術は今までやってきていますし、チームには三浦愛監督がいるので大丈夫だと思っています。なので、本当に気になったことだけは言いますけど、基本的にあまり言うことはありません。それよりは、やはり精神面でサポートしたいですね」 「チャンピオンを獲る大変さというのは、僕がいちばんよく分かっていると思っています。なので、やはり精神面のサポートをとにかく気にかけていて、彼女(斎藤)がより良い状態でレースに臨めるように、けっこう気を遣っています」 2015年FIA-F4選手権、2018年全日本F3選手権で王者を獲得し、スーパーGT GT500クラスでは2021年、2023年、2024年、そして今年はスーパーフォーミュラのチャンピオンに輝いている坪井。これまでの自身の経験を踏まえ“王者がかかるレーシングドライバーの心境”を語る。 「初めて獲るチャンピオンというのは、なかなか痺れるものがあるんですよ。レースでは、いつもできていることができなくなってしまったり、自分の技術を発揮することができなくなったりしてしまいます。なので、その部分を精神的に支えてあげて、自分の本来のパフォーマンスを出し切ってほしいです」 「その出し切った結果として、チャンピオンを獲ることができなかったら、それはしょうがないと思います。ただ、実力を出し切れないまま(チャンピオンを)獲れなかったら、ドライバーはそれがいちばんツラいことです。なので、そんな結果にならないような取り組み方やレースウイークの持って行き方などを心がけて(斎藤に)声をかけていますし、声をかけなくていいところは、あえてそのままにしています」 「そのあたりは、僕がこれまで経験してきたなかで、今やれることはすべてやっているつもりです」と締めた坪井。もし妻の斎藤がチャンピオンを獲得した暁には、「ふたりでお出かけがあまりできていないので、少しお休みをいただき、どこか遠くに出かけたいですね」と笑顔をみせた。“坪井家”の今後の活躍にも目が離せないだろう。 [オートスポーツweb 2024年12月22日]