新国立での天皇杯初優勝を土産に神戸ビジャが万感引退マッチ!「最高の形でキャリアを終えることができた」
ボールに触ったのは一度だけだった。しかし、プレーには関与したことにはならない。守護神・飯倉大樹のゴールキックをFW田中順也が相手と競り合いながら頭で前方へ流すも、落下地点に走り込んだFWダビド・ビジャが左足をヒットさせた時点で、すでに左タッチラインを割っていたからだ。 そして、鹿島アントラーズのスローインで再開された数十秒後に、5万7597人もの大観衆が見守る新国立競技場に、試合終了を告げる佐藤隆治主審のホイッスルが鳴り響いた。ヴィッセル神戸の悲願の初戴冠とともに、20年におよんだビジャのプロサッカー人生にも幕が降ろされた。 「これ以上は考えられない、最高の形で自分のキャリアを終えることができた。ヴィッセル神戸というチームは、特にこの最後の瞬間にかけて、本当にたくさんの素晴らしい時間を私に与えてくれた。このチームへ移籍すると決断したことを、心から喜んでいる」 元日に行われた天皇杯決勝。今シーズン限りで引退する38歳のストライカーの名前は、先発メンバーのなかに記されていなかった。元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキとの交代でピッチへ投入されたのは、4分が表示された後半アディショナルタイムが半分に達する直前だった。 清水エスパルスを3-1で退けた昨年12月21日の準決勝では、ビジャはベンチにも入っていなかった。ドイツ人のトルステン・フィンク監督は「コンディションが万全であれば、試合に出場していた」とエスパルス戦後に説明したが、舞台裏では事態は風雲急を告げていた。 ジュビロ磐田に4-1で快勝した同7日のJ1最終節。勝ち越し点となるシーズン13ゴール目となるPKを後半30分に決めていたビジャは、同38分に負傷交代している。箇所を含めた詳細は明かさなかったものの、ビジャ本人によれば「全治4週間の大きなけがをしてしまった」という。 「決勝に来るまでが私の戦いだったし、本当に大変な時期を過ごしてきた、と自分のなかでは思っている。ギリギリながらも何とかピッチに立てたからこそ、最後に優勝で終われたことに満足している」