「いいね」に疲れて「推し」がブームに? SNSでも人気のシロクマ先生に聞く"心理"
SNSでも人気の精神科医・シロクマ先生こと熊代亨さんの、「推し」をテーマにした最新刊『「推し」で心はみたされる? 21世紀心理的充足のトレンド』(大和書房、1760円)が、2024年1月31日に発売されました。
「萌え」という言葉が使われていた90年代後半から、自身もオタクとして、萌えや推しの現象を分析してブログで発信してきた熊代さん。本書では、推しとは何なのかを心理学的に考察し、その心理を現実の人間関係に活かすヒントを解説しています。
2月25日には、本書の刊行を記念したトークイベントが、東京都・阿佐ヶ谷ロフトAで開かれました。推しをもつ人に話を聞く連載「好きってなんなん?」第4回は、熊代さんが自身の体験や参加者からの相談をまじえて縦横無尽に語ったイベントレポートと、熊代さんにとっての推しと萌えをさらに掘り下げたインタビューをお届けします。
いいねの時代は終わった
トークイベントはまず、「いいね」と「推し」の話から始まりました。「いいねの時代って終わってませんか?」と切り出す熊代さん。
2010年代、SNSが広がってみんなが「いいね」を欲しがるようになって、 Instagramがめちゃくちゃ流行って。みなさんもやったと思います。それって、疲れたわりに得るもの少なくなかったですか?
本書では、マズローやコフートといった心理学者の説を取り上げて、現代人の心理を分析しています。コフートは自己愛パーソナリティ(トラブルに至りがちなナルシスト的パーソナリティ)の研究・治療で知られていますが、現代では自分を愛しすぎることが問題になることは少なく、むしろ「自分を愛そう」と言われることが多いと熊代さんは話します。
「いいね」の時代は、自分が認められる人間でいなくてはいけない、自分を愛して自分のライフスタイルを構築しようという時代でした。いいと言えばいいけど、しんどいと言えばしんどいですよね。そこに刺さったのが推しだと思うんです。 推しって、自分のことではないじゃないですか。自分のかわりに、推される側が物語を提供してくれて、夢を与えてくれるんですよ。誰かが自分の夢を叶えてくれるって、すごくハッピーなことじゃないですか。そう考えると、推される側の人たちって社会的に大事なことをしていると思いますよ。