「いいね」に疲れて「推し」がブームに? SNSでも人気のシロクマ先生に聞く"心理"
1997年に公開された『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』内で、アスカは亡くなりました。この死が、熊代さんの人生を大きく変えたと話します。
アスカは、私の悪いところを引き受けてかわりに死んでくれたと思ったんです。そして、アスカが私の脳内に棲みついて、「何やってんの、ちゃんとしなさいよ」などと言うようになりました。私は、アスカとともにまっとうに生きて、私が幸せになることでアスカも幸せになれると証明できるのではと考えたんです。ちょっとぶっ飛んだ話ですが......。 その通りに生きて、今に至ります。2021年の映画『シン・エヴァンゲリオン』がアスカと私の物語にピリオドを打ってしまったんですが、それでよかったとも言えるんですよ。その頃には、私たちは十分うまくいったと結論がついていたので。
アスカの後に好きになったキャラクターたちも、その多くがアスカに似た人物像だったそう。アスカのおかげで、キャラクターを好きになるのは楽しいことだということを覚えたと熊代さんはいいます。
最後に、「人はなぜ推すのか」と聞いてみました。すると「楽しいからだと思いますよ」というシンプルな返答が。
神だったりシャーマンだったり、太古の昔から人は推したり推されたりして心を満たしてきました。それが人と人とを繋いで、社会をつくってきたんです。人が何かを推すのは、とても根源的な行為だと思いますよ。 「いいね」の時代はみんな「自分が自分が」になって、人を推すことで得るものがあることを忘れていたと思うんですよ。でも熱心なオタクたちは「推し」を覚えていました(笑)。今こうしてたくさんの人が何かを推しているのは、「自分が自分が」だけでは心が満たされないことに気づいたからなんじゃないでしょうか。
「どんな推し方でも、楽しく推して、楽しく生きていってほしい」と語る熊代さん。推しを通して心を満たし、楽しく生きるヒントがこの本に込められています。 (東京バーゲンマニア編集部)