「いいね」に疲れて「推し」がブームに? SNSでも人気のシロクマ先生に聞く"心理"
熊代さんのオタクデビューは、1995~96年に放送されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』。ヒロインの1人である勝気な少女、惣流・アスカ・ラングレーが熊代さんの"萌えキャラクター"でした。一方で当時は、人を推す=応援することが得意ではなかったといいます。
当時は自分の承認欲求のことでいっぱいでした。「何者かになりたい」と思いながら、仕事がうまくいかず、とても人を推している余裕はありませんでした。 そういう時期の私にとって、二次元は星でしたね。惣流・アスカ・ラングレーや涼宮ハルヒ(『涼宮ハルヒの憂鬱』の主人公)が好きだったんですが、うだつの上がらなかった私の生きる糧でした。 幸い、職場でも推しになるような先輩と巡り会えたので、精神科医としても成長できたのですが、それまではオタクの世界で生きていましたね。
第5章では、かつての熊代さんのように、日常生活の人間関係の中で推しをつくることで、推しにポジティブな影響をもらって成長できるのではという提案がされています。熊代さんは、本書をあえて自己啓発書として書いたそうです。
職場でも推しを作ってみてくださいとこの本は言ってますけど、やっぱり嫌な人はいると思うんですよ。私はできるならば(読者の方に)社会適応してほしいと思ってるけど、人の生きる道ってそれだけじゃないですよね。 この本に書いてあるのも一つの道だけど、そこにこだわらずに、推しと楽しく生きていってほしいと思います。社会的に破綻したり、人に迷惑かけたりしない限りは、どんなふうに推したっていいんですよ。
萌えと推しはどう違う?
後半は質疑応答の時間をたっぷりと取り、参加者の質問やお悩みに答えていきました。
「推しコミュニティに参加したことがなく、うらやましいです。交流はどんな感じですか」という質問が上がると、熊代さんは「ファンコミュニティは、楽しさもあるけどつらさもあります」と回答。ファン内の不文律があったり、他人の推し活を見てあれこれ考えてしまったりするケースも少なくありません。こうしたファン同士のつながりは、熊代さんがオタクを始めた萌えの時代よりも、推しの時代のほうが格段に増えたといいます。