【希望者必見】専門家が超わかりやすく解説。障害年金「受給に必要な3つの要件」満たしていないと受給不可に。
障害を抱えた人の生活をガッチリ支える「強い柱」になる可能性があるのが「障害年金」の制度だが、仕組みは驚くほど複雑だ。受給するためには所定の「診査」を経なければならないが、それ以前に3つの「要件」をクリアしなければ却下されてしまうこともある。受給を希望する人が必ず突き当たる、この「要件」とは、一体どのようなものなのか、青木聖久教授(日本福祉大学)が解説する。新刊『発達障害・精神疾患がある子とその家族が もらえるお金・減らせる支出』より抜粋・再編集してお届けしたい。 画像】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待「すべてが壊れた日」 前編記事〈【精神保健福祉の専門家が警鐘】誰もが精神疾患になり得る! この時代に忘れてはいけない「たった1つの手続き」〉より続く。
障害年金の「3つの要件」とは
精神疾患や発達障害を抱えている人が障害年金を受給するには、年金を請求する必要があります(「申請」のことを障害年金の制度では請求と呼んでいます)ただし、請求の手続きは複雑で、この記事ではそのすべてをお伝えすることはできません。 ここでは、障害年金を請求するとき必ず問題になる「要件」に的を絞って解説したいと思います。障害年金は、一定の要件を満たしていなければ受給できません、その要件とは、具体的には、 (1)「初診日」に関する要件 (2)「保険料の納付」に関する要件 (3)「障害状態」に関する要件 この3つです。耳慣れない用語ばかりで戸惑った方も多いでしょう。以下、この3つについてできるだけわかりやすく、かいつまんで説明し、制度全体の紹介に代えたいと思います。
【要件1】「診断が出た日」ではありません! では「初診日」とはなにか
初診日とは、障害の原因となった病気・ケガなどの症状で「初めて医師などの診察を受けた日」のことです。同一の障害で転医(医師が替わること)があった場合は、いちばん初めの医師の診察を受けた日が初診日となります。
精神疾患・発達障害の初診日には注意が必要
初診日がわかると、後述する「障害認定日」が決まります。また、自分がどの障害年金に該当するのか決まるので大切です。年金制度に加入前の20歳前に初診日がある人、初診日の時点で国民年金に加入している人は、「障害基礎年金」に該当します。 一方、初診日の時点で厚生年金に加入している人は「障害厚生年金」に該当します。 初診日は、「診断が出た日ではない」という点がポイントで、精神疾患・発達障害の場合は、本人や家族が思っていたより早い日が初診日になるケースもあります。 たとえば、20歳を過ぎて就職後に、統合失調症で初めて精神科にかかった会社員がいました。彼は〈精神科にかかった日が初診日で、だから自分は障害厚生年金に該当する〉と考え、年金を請求したのですが、国民年金の保険料に多くの未納期間があり却下されました。 国民年金の保険料を一定以上納めているか、定められた手続きで免除を受けるかしていないと、障害年金は受給できないのです(これが後述する「保険料の納付要件」です)。 会社員の彼は途方に暮れました。ところがその後、10代の頃から「変な音が聞こえる」という症状があり、耳の病気だと思って別の医師を受診していたのを家族が思い出します。そこで耳を診てくれた病院へ行くとカルテが残っており、医師も音は統合失調症の症状(幻聴)であると認め、初診日を証明する書類を書いてくれたので、障害基礎年金を請求し受給できました。 このように初診日が「変わる」ケースもあるのです。この会社員の場合は、国民年金に加入する前の10代の頃に初診日があると認められたことで「保険料の納付要件」を問われなくなり、そのおかげで状況が一転、障害年金の受給が認められたのです。