キプチョゲの男子マラソン2時間切りの快挙を海外メディアはどう伝えたのか?「歴史的快挙」「主催会社は18億円投入」
男子マラソンの世界記録保持者でリオ五輪金メダリストのエリウド・キプチョゲ(34、ケニア)が12日、オーストリアのウィーンで行われた「1時間59分チャレンジ」というマラソンの挑戦レースで1時間59分40秒2をマーク。ついに人類として初めてマラソンで2時間を切った。だが、国際陸連の非公認レースのため世界記録には認定されなかった。 昨年のベルリンマラソンで2時間1分39秒の世界記録を樹立したキプチョゲは、今回、ウィーンの公園内で、コースの約90%が直線で、高低差のほとんどないという記録用のコースで、複数の五輪メダリストらが交代でペースメーカーとしてレースを引っ張り、7人がキプチョゲを囲んで風よけになる好条件を作って2時間切りに挑戦した。海外メディアもこの“快挙”を大々的に報じた。 米国のタイム誌は「キプチョゲがマラソンを2時間以内に走る歴史的記録を作った最初の人間に」との見出しで報じた。 「キプチョゲの2時間切りを目的にしたイギリスの複合化学メーカーのイネオス社によって特別に催されたイベントで、路上には、2時間切りに最適なポジション取りを示すレーザーを放つペースカーが用意され、41人からなるプロのペースメーカーによるチームが、彼の脇を順番に走りペースを支えた」とレースの様子を伝えた。 記事はペースメーカーが入れ代えで走ったことで、「彼の歴史的達成は公式な記録とはならない」と紹介。「だが、心配することはない。キプチョゲはまだ2018年のベルリンマラソンで作った2時間1分39秒の男子世界記録を保持している」とし、「キプチョゲは世界最高のマラソン選手の1人。マラソンの国際競技で8度優勝。五輪では3つメダルを獲得している」と好意的に記事をまとめた。 英国のBBCもキプチョゲのマラソン2時間切り達成を伝え、「このレースは公式なオープン競技ではなく、キプチョゲ一人のためにペースメーカーをチームローテーションで使ったため、公式なマラソン記録としては考慮されない」とした上で、「誰にも限界はないということを見せられた。今、自分がそれを果たした。自分の後にもっと多くの人がやり遂げると期待している」というキプチョゲのコメントを紹介した。 記事は「1キロを2分50秒のペースで走るために、そのペースを示す緑のレーザーを道路上に当て続けたペースカーに率いられた。キプチョゲは1キロを2分52秒より遅く走ることは一度もなかった。この記録を破るために、彼は時速21.1キロ(時速13.1マイル)で100メートルを422回にわたり17.08秒で走り続けなければならなかった。半分を過ぎた段階で、彼は予定のペースよりも10秒早く走っており、最終ステージへ向けて再びペースを上げた」とレースの様子を描写した。 41人のペースメーカーが交代で走り、その中には、リオ五輪1500メートルの金メダリストのマシュー・セントロウィッツ、リオ五輪5000メートル銀メダリストのポール・チェリモや、ヤコブ・フィリップ、ヘンリックのインゲブリクトセン兄弟がいたという。 「彼らは順番に(ペースメーカーに)入ったり出たりして、キプチョゲの周りを走るフォーメーションを作り、1500メートルと5000メートルの前チャンピオン、バーナード・ラガトが最終区間で走った」と伝えた。 そして、「プラーター公園の5.97マイルコースを4.4周する間、通常のマラソン競技のようにテーブルに飲料物が置かれた給水場はなく、代わりにキプチョゲのコーチたちは、バイクから水や、エネルギージェルを手渡した。これらの助けは、IAAF(国際陸上競技連盟)のルールでは許されておらず、そのため、この偉業は公式なマラソンの世界記録としては認識されない」とも続けた。