キプチョゲの男子マラソン2時間切りの快挙を海外メディアはどう伝えたのか?「歴史的快挙」「主催会社は18億円投入」
また記事は、「この場所は好条件の天候、風向き、ルートを通じて、わずか2.4メートルの傾斜しかなく、ほぼ平らな地形という点から選ばれた。ナイキが(イタリアの)モンツァで主催した『ブレーキング2プロジェクト』での前回の挑戦とは違い、2.67マイル(約4.3キロ)の直線が2つと、それぞれの最後に2つの小さなループを配したコースが作られ、そこで観客が沿道に立った。ナイキもキプチョゲに過去5つのマラソン最速記録で選手に着用されてきたシューズの新モデルを提供した」と今回のプロジェクトの背景を伝えた。 英国のガーディアン紙も「キプチョゲがマラソンを2時間以内で走り歴史を刻む」との見出しを取ってキプチョゲの偉業を伝えた。だが、記事は、「他のスポーツや歴史的出来事との比較は避けられず、当然行われていくだろう。65年前に広く不可能と考えられてきた1マイル(1.6キロ)を4分以内で走ることを達成したロジャー・バニスター氏との比較は当然だろう。だが、何人かの評論家が主張したように初めて月にたどり着いたニール・アームストロングの領域に踏み込んだというのは拡大解釈だ」と、やや批判的な論調。 「これは計画的に軍事レベルの高額な予算によってもたらされた挑戦だった。ウィーンは気候条件が良くロンドンよりも好まれた。キプチョゲは1キロを2分48秒と2分52秒の間で走った。フェニックスフォーメーションの2-1-2-2で形成された7人のペースメーカーのチームは、キプチョゲを時間通りに走らせるだけでなく、彼を囲み、わずかな微風からも守って見せた。この記録は論議を呼ぶものだ。(時間の)遅れから守るためのペースを示す位置も緑のレーザーを使って路上に当てられた。これは我々が知っている(マラソン)競技ではない。キプチョゲが走ったルートは、ほぼ平地で90%が直線だった。丘は存在せず(マラソンで)生かされることはなかった」と、その背景についても触れた。 また石油化学企業のイネオス社は、このイベントに1500万ユーロ(約18億円)をつぎこんだという。先日、薬物の不正使用問題により4年間の資格停止が発表された「ナイキ・オレゴンプロジェクト」のアルベルト・サラザールヘッドコーチについても触れ、キプチョゲが、そのナイキの所属選手で「キプチョゲのランニングシューズは、やがて一般に240ユーロ(約2万9000円)で販売され、棚に並ぶことになるだろう」とも付け加えた。 そして「このイベントは人間の限界の壁を壊し、人間には限界がないことを証明するものだった。マラソンの記録はまだ天井に達していないのかもしれない」とも記した。 また「謙遜することの多いキプチョゲが、今回は最初の1キロを走る前に目標を達成できると分かったことを明かした。レース半ばで少し問題が見られたという指摘についてもぴしゃりと否定し、『それは本当ではない』と語った」と紹介。「ロンドンマラソンの4度優勝者(のキプチョゲ)がこの挑戦のためのトレーニングをしたのがわずか4カ月だったことも驚きだった。そして土曜日朝の朝食はオートミールだった」とも明らかにした。 記事は最後に、「キプチョゲは静かに41人のペースメーカーの集まりから外れた。ウィーンのこの区画は、迅速に正常に戻された。一方で、マラソンはもう二度と同じには戻ることはないだろう」と、このレースの最後の様子と、見解でまとめられている。