日本経済復活に「余計なことはするな」…“為替介入の司令塔”神田前財務官に直撃!【独自インタビュー】
■日本の国際競争力復活へ…「余計なことはするな」の意味とは?
◇今、日本では新たなイノベーションが起きず、デフレマインドも染みついていると言われる。再び日本が国際競争力を取り戻していくために、何を急ぐべきなのか? ーーー何っていうか、もう普通のことを、「普通の市場経済」を取り戻せばいいっていう感じがするんですね。むしろ余計なことをしないっていうことかもしれません。 結局、例えば今まさに話題になっているように、金利や賃金が上昇しつつあると。そうすると、これまで温存されてきた、自力での存続が見込めない、低収益・低賃金企業、いわゆる“ゾンビ企業”の退出が増えていく。マーケットでの自然な淘汰かもしれません。 こうした企業を逆に保護してしまうと、資本・労働の生産性の低い分野、企業に固定されて、生産性の向上に繋がらない。まさに、これまでの「失われた30年」が長引くだけですので、やはり、市場の新陳代謝の機能を取り戻すっていうのが大事で、そういった意味では、最低賃金の引き上げっていうのも、すごく重要です。 高賃金を払える生産性の高い企業に、貴重な労働力がシフトする。まさに今アメリカで起こってる、インフレっていうのはそのせいなんですけど、逆に生産性が上がって、みんなの給料が増えてるわけですよね。
■日本経済復活へ…“ゾンビ企業”の退出で「普通の市場経済」を取り戻せ!
他方ではもちろん、脆弱な個人を対象にしたセーフティネットっていうのは、しっかりと提供しなきゃいかん。これはもう、政府の義務です。だけれども、他方で、現状維持を志向するっていうことを繰り返しちゃいかんと思っています。 規制改革で、企業間競争を活性化させて、新陳代謝を促す。それから、転職に中立的な制度設計を通じて、成長分野への労働移動を円滑化する。それから、流動的な労働市場っていうのは、労働者に多くの雇用の機会を与えますので、個人が最適なキャリアを実現する上でも、望ましい。非常に、当たり前のことなんですけども、良いことが多いんですね。 よく、中小企業の話が出ますけど、ここでもやっぱり、固定化された労働市場の中で、非常に人手不足で困っている。能力ある人材の獲得に苦慮しているわけですから、労働市場の円滑化っていうのは、新たな人材の獲得機会を提供することになります。 新たな、今まで難しかった人材獲得っていうのができるようになるわけですから、成長産業への移行を遂げるチャンスになるわけですね。なので、新たな産業、成長産業の担い手となる雇用を吸収して、一段と生産性を高めていくことが期待できると思っています。 やれることはたくさんあるし、そんなに、なんていうか、無茶なことをやる必要もない。ある程度、「普通の市場経済」を取り戻す。ただそのときに、セーフティネットはしっかりとお支えしなければいかんということだと思います。 ◇ただ単に“ゾンビ企業”に退出を促すというわけではないと? ーーーはい。あと今申し上げた、新陳代謝とか、成長分野への労働移動もありますけども、もう一つは、この懇談会でも柱にしてるのが、人的資本への投資。それから、フロンティアの技術への開発を推進する。こういったこともやって、企業の競争力を高めて、日本を魅力ある投資先にしていくっていうのが、王道だというふうに思っています。 ◇“魅力ある投資先”というのも、難しい道のりのような気もするが? ーーー結局、リターンが高いところに投資が行われるわけですから、労働市場が流動化して、生産性が上がっていけば、リターンが高くなって、日本企業も、第一次所得収支を日本に回帰させて、投資するようになるかもしれないし、海外の人も直接投資で、日本にもっとお金を落としてくれるかもしれませんし、そのプロセスの中で、さらにイノベーションができれば、好循環が始まりますよね。