2021年の岡田将生『エンターテインメントは絶対必要』
30代はがむしゃらに駆け抜けた20代を経て落ち着きや包容力、余裕が感じられてくる年代だ。平成元年生まれの岡田将生も気がつけば32歳となり、人としても俳優としても大人の魅力が香り立つ。これから一層期待される存在だ。岡田のこれまでと現在地、そして作品や演技への取り組みについて聞いた。
何も考えず突っ走った新人時代
岡田は中学2年の時に原宿でスカウトされたが人前に立つことが得意ではなかったのと部活に夢中だったこともあり、いったんは断ったという。 「関心はなかったですね。テレビをあまり観てなかったので」 だが高校に入ってから何をしていいのかわからなくなり、心境に変化があらわれたそうだ。無料で芝居のレッスンを受けられるのはいいなと、原宿でもらった名刺に書かれた事務所に連絡をとったのだとか。そしてこれがそのまま芸能界入りにつながり、2006年にデビューを飾ると映画にドラマに順調に出演を重ねた。とくに2008年から2009年にかけては『魔法遣いに必要なこと』(中原俊監督)、『ハルフウェイ』(北川悦吏子監督)、『ホノカアボーイ』(真田敦監督)、『重力ピエロ』(森淳一監督)、『僕の初恋をキミに捧ぐ』(新城毅彦監督)といった主演または主演クラスの作品に続々と恵まれ、数々の映画賞の新人賞に輝いた。 「新人でしたから何も考えずに突っ走ることができた時期でした。現場でも右往左往していましたけど、どこかお芝居というものが面白いということには気づいていたように思います。役者としての可能性を引き出してくださる監督やスタッフ、キャストの方々のおかげで、なんとか成立して現場にいることができたんだと思います」 がむしゃらに突っ走った時期が過ぎて、役者としてどんな変化があったのだろうか。 「まずひとつの作品に集中して臨むようになったし、焦らずじっくり作品に関われるようになりたいという気持ちになっていきました」
役作りは役の人物像を把握することから
そうこうしているうちに30(歳)を超えていた、と笑う岡田だが役作りや芝居で感じる手応えについて聞くと真剣な表情に戻ってこう話す。 「役作りで最初にやるのは役の人物像を把握することです。どういう環境で育ってきたのかなどを、監督と話して自分の中で構築していくときもあれば自分の中だけで想像しながらやっていくときもあります。役に応じて求められているものを習得したり内包したりしながら役を作っています。ただ、役者として手応えを感じるという経験はそれほど多くはありません(笑)。手応えを感じるときって、監督が求めているものと自分が求めているものの相性が良かったりするときや、役とどれだけ向き合えているかという部分において自分の中でどう感じるか。そういう意味ではこれまでに数回あるかないかです」 作品づくりの楽しさも感じている。 「具体的に言うのは難しいのですが、いろいろな方々が携わっていて、そのなかで現場でワンシーンずつ撮っていったものがつながっていく瞬間が面白いですね。現場によっても人によっても変わるので、生き物みたいな感じです。作品づくりは毎回難しいし自分自身も削られます。でも作品をつくることの楽しみを知っているからこそいろんな作品に関わりたいし、まだまだ好奇心があります」