防災心理学者・矢守克也 「避難して災害が起きなくても、空振りではなく、素振りと考えて。「ふだん」と「まさか」を近づける《生活防災》が大切」
『婦人公論』8月号(7月15日発売)では、「豪雨、地震、台風……今すぐ見直すわが家の防災」という特集を組み、自然災害への備えについて特集しました。そのなかから、選りすぐりの記事を配信します。 ***** 命を守るために、防災用品などものの準備はもちろん、《心の準備》もしておきませんか。神奈川県と富山県の2拠点生活をしている女優の紺野美沙子さんが、防災心理学の専門家、矢守克也さんに災害時に役立つアドバイスを聞きました (構成:上田恵子) 「生活防災」とは?防災心理学キーワード * * * * * * * ◆「生活防災」の備えは楽しく快適に 矢守 紺野さんは日常生活のなかで、何か災害に備えていらっしゃることはありますか? 紺野 恥ずかしながら大したことはしていないんです。ただ、東日本大震災の時に帰宅難民になられた方が「ハイヒールで歩くのがつらかった」と言っていたので、履く靴は普段からスニーカー一択にしました。 あとはヘルメットを自宅に置いているのと、バッグに入れて持ち歩く小さなペンライトを買いました。暗所で被災した時に便利ですし、閉じ込められた時に居場所を知らせる光源にもなるので。 矢守 いいですね。そのペンライトは、まさに義母が熊本地震で停電した際に役立ったと言っていました。ほかに助けを呼ぶためのホイッスルなどもおすすめです。食料品はどうですか? 紺野 水は一番重要なのでペットボトルを数箱分、ストックしています。食品はレトルト食品やインスタントラーメン、缶詰パンなど。あと、富山には美味しい水が湧き出る名水スポットがあるんです。月に数回通って汲み置きした水があったので、今年の地震の時も助かりました。
矢守 ふだんの生活の延長線上に防災がある。まさに理想的な環境です。実はそこが一番大事なポイントで、災害は「まさか」の出来事ですが、できるだけ「ふだん」と「まさか」のギャップを小さくする生活を心がけるのが、「生活防災」の考え方なんです。 紺野 「生活防災」ですか! 矢守 「まさか」の時のためだけに準備する行動は、いずれやらなくなるからです。「まさか」はめったに起きない。ふだんから楽しく快適で役に立つものが、まさかの時に「やっておいてよかったね」となるのがベスト。 紺野 なるほど。「ふだん」と「まさか」が、無理なくつながることが理想的なのですね。 矢守 そういう意味では、非常食も普段から食べ慣れたものや、好きな味のものをストックしておくといいでしょう。賞味期限が近くなったら食べて、新しいものを補充する。それを「ローリングストック」と言います。 紺野 ひと昔前は非常食と言えば乾パンが主流でしたが、種類が増えてありがたい。(笑) 矢守 被災した時は体も心も弱っています。そんな時こそふだん食べているもの、美味しいものを食べると元気が出るんですよ。甘いお菓子や嗜好品を入れておくのもおすすめです。 紺野 さっそく大好きなドリップコーヒーのパックとチョコレートを備蓄品に加えてみます。
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