防災心理学者・矢守克也 「避難して災害が起きなくても、空振りではなく、素振りと考えて。「ふだん」と「まさか」を近づける《生活防災》が大切」
◆自力で歩けるのは防災上の最大の武器 紺野 先生のお話をうかがって、どこで災害に遭っても不思議ではないということと、「自分は大丈夫」といった心理に気をつけたほうがいいことがわかりました。私自身はもっと足腰を鍛えたほうがよさそうです。いざという時に逃げられるだけの、気力と体力をつけておかないと! 矢守 私は「動ける体が一番の防災グッズ」と言っているんです。自力で歩けるというのは防災上の最大の武器ですから。地域住民の健康寿命を延ばすことも、生活防災になります。 紺野 避難できたとしても、避難生活が続く場合もあります。体調を崩すと心も弱ってしまう。 矢守 熊本地震の際、驚くべきことに亡くなった方の8割以上が関連死なのです。建物倒壊など地震が直接の原因で亡くなった方は2割。せっかく避難して守った命が、心労や仮設住宅での生活の負担などが原因で失われているのは深刻です。しかもその多くが高齢者です。 紺野 生活を立て直すには時間がかかるだけに、気力と体力が必要とされますね。あと、私は東日本大震災以降、家に一人でいる時はトイレのドアを開けておいたほうがいいのかな、と思うようになりました。閉じ込められたら困りますから。地下鉄に乗っている時も、地震が来たらどう逃げるべきかを考えたり。 矢守 地震は時と場所を選ばないので、そのように避難方法をシミュレーションするのはとてもいいですね。台風や水害はある程度予測可能なので、より具体的な避難想定ができるでしょう。災害にしっかり備えるには、「想像力」と「冷静な判断」をしようという姿勢が大切です。 紺野 肝に銘じます。本日は、人間の心理をついた防災の知恵をありがとうございました。 (構成=上田恵子)
紺野美沙子,矢守克也
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