39歳「ひきこもり」息子の69歳母が抑うつに 頼りは老齢年金だけ 孤立無援の一家に見かねた社労士が導き出した“再起への一歩”
障害年金には年齢制限がある
母親からの聞き取りを踏まえ、私は障害年金の制度について説明しました。 「障害年金を請求するためには、その障害で初めて病院を受診した日(初診日)が次のいずれかに当てはまっている必要があります」 (1)国民年金に加入している期間(20歳から60歳まで) (2)20歳前の期間 (3)日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の人で年金制度に加入していない期間 (4)厚生年金保険に加入している期間 「お母さまが抑うつ状態で初めて心療内科を受診したのは69歳ごろとのことなので、これら4つの条件のどれにも当てはまりません。よって、お母さまは障害年金を請求することができません」 そのことを聞いた母親は、肩をがっくりと落としてしまいました。 「私は障害年金が請求できないのですね。それは残念です…。ちなみに条件(3)にもありますが、なぜ65歳未満までなのでしょうか」 「65歳になると老齢年金が受給できるようになるためでしょう。障害年金はどちらかというと現役世代の人向けの制度なのです。現役世代の人がその障害により就労が制限され、収入が少なくなってしまった、65歳になるまで老齢年金も受給できない、そのような人を救済するための年金だからです」 法律上、母親は障害年金の請求ができません。とはいえ母親の置かれている状況が思わしくないのは確かです。そもそも母親が抑うつになった原因の一つは、家庭内の問題を母親がすべて1人で抱え込んできたからなのかもしれないと私は思いました。そこで私は次のような提案をしました。 「全国には、ひきこもりのお子さんを持つご家族が集まる親の会があります。同じような境遇のご家族と話し合うことで、少しは心のゆとりを取り戻せるかもしれません」 私は説明を続けました。 「市区町村役場にひきこもりの相談窓口があります。ご主人さまが高齢になって支援が必要になりそうなら、まずは地域包括支援センターで相談するのがよいでしょう。もちろん相談したからといって問題のすべてが解決するわけではありませんが、それでもお母さま1人で抱え込まない方がよいと思います」 「そうですよね。誰かに話を聞いてくれるだけでも気分が少し軽くなりますし。まずは、親の会から調べてみよう思います」 母親は小さな声でそう言いました。
社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也