賞金総額3750億円のCWCがJリーグに与える影響は? 新時代に求められる「国際常識への適応力」
2025年の6月15日~7月13日、新方式で始まる『FIFAクラブワールドカップ2025』がアメリカで開催される。この世界32クラブが集う大会には、2022年のACLチャンピオンとして浦和の参戦が決まっており、日本国内でも注目が高まっている。 【動画】「メッシのような」ファインゴール!久保建英がアヤックス相手に沈めたゴラッソを見る 特に大きな話題になっているのは、賞金の多さだ。大会の賞金総額は約3750億円、チーム当たりの分配額はまだ正式に発表されていないが、浦和は出場するだけで、30~80億円を手にするのではと目されている。 2024年のJ1優勝賞金は、3億円+理念強化配分金の5億円で、合わせて8億円だった。 一方で、2024-25シーズンから名称が変わった『AFCチャンピオンズリーグエリート』(ACLE)の優勝賞金は、約15億円に大幅アップしており、そこに上記のクラブワールドカップ出場ボーナスとして数十億円が加算される。 10年ほど前、「ACLは罰ゲーム」と揶揄された時代が懐かしい。今やJリーグにとって、アジアから世界へつながる道は文字通り、桁違いの賞金を得られるビッグチャンスになった。 今後は国際大会に力を注ぐJ1クラブが増え、そこでの成績が国内のパワーバランスに影響を与える。たとえば来季に向けての浦和は、このオフシーズンの動きとして、国内の「いっちゃんいい選手」に手当たり次第に声をかけてきた印象があるが、その背景にあるのが来年のクラブワールドカップであることは言うまでもない。 ひと昔前に比べると、国内選手の流動性が高まった故か、Jリーグの順位と強化予算の相関は強くなったと言われる。今季のJ1、あるいはJ2やJ3を見ても、東京VのJ1で6位のような誉れ高き外れ値こそ存在するものの、全体的には強化予算との相関は強い。そのパワーバランスを、今後は『クラブワールドカップ』という新たな生態系が登場し、動かすことになるわけだ。 そして、こうした動きの中、2026年からはJリーグのシーズンが移行する。 2024-25から秋春制に変更されたACLと、現在のJリーグの日程は、絶望的に相性が悪かった。J1の優勝を争うシーズン終盤と、ACL、国内カップ戦の佳境が、地獄の過密日程を生み出す現状は「ACLは罰ゲーム」の感覚を抜けさせてくれない。シーズンが移行すれば、ACLに淀みなく全力を注ぐクラブは増えるのではないか。 ただし、それは諸刃の剣でもある。 欧州クラブとシーズンを一致させた場合、新チーム編成のために最も大きなお金を動かす時期が、夏に重なる。つまり、今オフの浦和のように「いっちゃんいい選手」に手当たり次第に声をかけた場合、今後はチーム編成期の欧州クラブと競合し、思うように補強できなかったり、高値でつかまされたりと、今まで通りには補強が進まない可能性が高い。ただでさえ、日本人選手は欧州志向が強いだけに、尚更だ。 また、欧州クラブはリーグが開幕した後も、移籍市場が閉まるその瞬間まで補強の動きを止めない。昨シーズン、遠藤航が開幕後のリバプールに移籍したのが好例だ。今季のJ1でも、開幕後に新潟の新井直人が広島へ電撃移籍し、「裏切り」と物議を醸したが、シーズン移行後は、そうした動きを世界中の秋冬シーズンのクラブが仕掛けてくると覚悟しなければならない。常に獲得候補のリストアップを続ける必要があるし、また、開幕後の違約金については通常とは別額で設定するなど、契約内容も工夫する必要があるかもしれない。 つまり今後は、国際大会への注力とともに、国際常識へのフィットがより一層求められる。その視点で、この2年ほどの各クラブの強化を見ると、準備万端と感じるクラブもあれば、かなり心配なクラブもある。 桁違いの国際大会、それに合わせたシーズン移行。これからの2~3年でサッカー界に起きる激動は、Jリーグの勢力図を大きく塗り替える可能性を秘める。さて、あなたのクラブはどうか。 [文:清水英斗]