オープン早々、超予約困難店に! 和牛×フレンチの新たな可能性が食通たちの心をくすぐる
カウンター内で腕をふるう北山拓磨シェフは、専門学校在学中にリヨン留学も経験。卒業後はフランス各地のミシュランの星付きレストランで修業を積んだが、中でも刺激を受けたのは、オーベルニュ地方の三つ星店「レジス・エ・ジャック・マルコン」と話す。
オーナーシェフのレジス・マルコンは、仕事をする上でいかにコンセプトを確立させるかに重きを置いていると語っているが、「EN」でも北山シェフは明確なテーマのもとに自身の豊富な経験を重ねた料理をつくりたいと、開店まで試行錯誤を繰り返してきた。
「和牛ガストロノミー」というジャンルはあまり耳慣れないが、これには北山シェフの心を動かしたある出会いがあったという。それは、西麻布で人気を集める焼肉店「うし松」チームとの“縁”から始まった。最高峰の和牛で世界中から食通のゲストを迎えてきた「うし松」は、昨年、焼肉の新しい可能性を広げるため、麻布十番で串に打たない鶏焼肉店「一鳥目 とり松」を立ち上げ話題を集めたが、「EN」ではフレンチ一筋で腕を磨いてきた北山シェフと、すべての銘柄牛のルーツとも言われる最高峰の但馬牛の華麗なるコラボレーションで食べ手に新しい感動をもたらしたいという熱い思いがある。
フレンチと和の技法、そして極上肉が融合したコースに舌鼓を打つ!
「EN」で供されるのは41,800円のコースのみ。「和牛とフランスの牛は肉質も脂質もまったく異なります。うし松であつかう但馬牛は熟成もさせないので、いかに肉の個性を大切にしながら、フレンチの技法を盛り込むかということを考えました。牛を一頭買いするので、さまざまな部位を使うことができるというのも強みのひとつです」と北山シェフ。席に着いたゲストはまず、その日に調理される牛の塊肉とご対面。肉のツヤやきめ細かいサシは思わず見惚れるほど美しく、どういうふうに調理され、どんな美味に昇華されるのかと想像しただけでも期待に胸が膨らむ。
「フランス牛と和牛はまったく違う食材のイメージ」と北山シェフはきっぱり。しなやかな肉質、脂の上品な甘みや口どけ、香り。それらを丁寧に引き出しながら、フレンチの要素を組み合わせるために火の入れ方、ソースのレシピなどを徹底的に研究したという。例えばコースの序盤に登場するイチボのタタキは、肉の甘みを引き立てるために2種のソースをつくり、特におだやかな酸味使いを意識。コンポジションとは、異なる性質を持ったものを組み立て完成させるという意味だが、柑橘やネギの風味が重なることでイチボのしとやかな甘みがさらに増す。