「人とのつながりが薬になる」―内門大丈先生インタビュー【後編】
◇地域全体で患者さんをサポート
認知症は一筋縄ではいかない病気ですので、総合的に患者さんを支えるためには医療の提供だけではなく、地域全体がさまざまなアプローチでサポートをすることが大切です。そのため私はクリニックの運営のほか、認知症に関する啓発活動・地域コミュニティの活性化に積極的に取り組んでいます。 取り組みの1つに「SHIGETAハウスプロジェクト」があります。SHIGETAハウスは認知症の人・認知症の人の家族・専門職・地域の人々が認知症についてともに語り、学び、広く発信していく場として、平塚市にある繁田 雅弘先生(東京慈恵会医科大学 名誉教授 )の生家に作られました。2018年のスタート以降、認知症カフェのほか、近くの畑での野菜収穫、音楽を楽しむ会の開催などの活動を行っており、患者さんやご家族へ身体的・精神的なサポートをする場として機能しています。そしてこのたび、2024年6月に栄樹庵診療所をこのハウス内に開設し、繁田先生を院長として認知症診療を始めることになりました。診療所の一室に認知症カフェを併設するという話は多いかもしれませんが、認知症カフェの一室に診療所を作るというパターンは珍しいかと思います。皆が笑顔で互いに支え・支えられる、暖かな居場所にしていきたいと考えています。
◇人とのつながりがいかに大切かを実感
さまざまな啓発活動をとおして得た気付きは「人とつながっていなければ何もできないし、楽しくない」ということです。人のありがたさを知ることもできました。 これまで多くの認知症の患者さんを診てきて、医学的な力ではなく、人との関わり・介入によってBPSD(行動・心理面での周辺症状)が改善された例を目の当たりにしてきました。私は「人薬(ひとぐすり) 」と呼んでいますが、家族や周囲の援助がいかに効果的であるかを実感しています。人の精神は人の力でないと治らないこともあるのです。 人の関わりによるアプローチが効果的であることは、認知症のある人も認知症のない人も基本的に同じです。私自身、人との関わりによって助けられている感覚を得られて、気持ちが満たされたり成長したりすることができています。