【なぜ】息子の死は『指導死』か否か…大阪の有名進学校でカンニング後に自殺 「適切な指導だったのか」遺族らの悲痛の訴え 過去にも約100件の“指導死” 問われる教育の在り方
「指導死」ー。 教員の不適切な指導がきっかけで子どもが自殺することを指して遺族や研究者が作った言葉で、長年にわたり指導の改善が訴えられてきた。 【赤裸々に語る】『全てを彼から学んだ』元検事正からの性加害を訴える女性検事が激白「正直言って憤り」検察庁の対応に「職員を守る気がない」(単独インタビュー全文掲載=前編=) 大阪市天王寺区にある有名進学校「私立清風高校」の男子生徒が、カンニングが発覚した2日後に自ら命を絶った問題。遺族が起こした裁判では、いわゆる「指導死」だったかどうかが争われている。 男子生徒の両親は「カンニングが悪いことは分かっているが、人格否定をするような教員の指導は適切だったのかを問いたい」と訴える。提訴から約9か月がたち、非公開の協議で双方の主張が衝突し続ける中、指導の在り方を考える。(報告:丸井雄生)
■発覚後、4時間にわたり叱責・反省文 自らを「卑怯者」と呼ばされ…
「ものすごく優しい息子だった」 「いつも『お母ちゃん大丈夫?』と声をかけてくれるような子だった」 両親が思い出すのは優しい我が子の姿ばかりだった。中学時代は生徒会長を務めるなど真面目な性格。塾の勧めで入学したのが、清風高校だった。 2021年12月に行われた期末試験。倫理政治経済の科目で男子生徒のカンニング行為は発覚した。 訴状などによると、発覚直後、男子生徒は生徒指導室で約4時間にわたって叱責されたり反省文を書かされたりした。母親が学校に呼び出された後も、教員に囲まれた男子生徒は泣きながら謝罪。教員から「カンニングがなぜ悪いか」と尋ねられると「ずるいことをしました」と返した。ところが、教員は続けて問い詰めたという。 (男性教員) 「それにとどまらない、卑怯なことだ」 (男子生徒) 「卑怯者です」 清風高校では朝礼で「カンニングは卑怯者がすることだ」と訓話が行われていた。母親は当時の状況について「自らのことを『卑怯者』と言う息子に違和感があった」と振り返る。
■遺書に「死ぬ恐怖よりも、周りから卑怯者と思われ生きるのが怖い」
男子生徒には以下の処分が言い渡された。 ●全教科0点 ●家庭謹慎8日(友人等との連絡禁止) ●写経80巻 ●反省文と反省日誌の作成 ●学校推薦は行わない カンニングが発覚した翌日、男子生徒は深夜まで写経に取り組んだ。母親は「もう明日にしたら」と声をかけたが、「もうちょっとやってから寝る」と答えたという。「午前1時ぐらいまで写経をやっていて、私は『先に寝るね』と言って…」。これが、親子で交わした最後の言葉となった。 翌朝、男子生徒は近所で変わり果てた姿で見つかった。自ら建物から飛び降りたとみられている。