「アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界展」が府中市美術館で9月に開催。版画と油彩画で、知られざる魅力の核心に迫る
パリ時代の華やかな版画とパリを離れた後に打ち込んだ油彩画、さらに素描や下絵も合わせて、ミュシャの魅力を紹介する
府中市美術館で「市制施行70周年記念 アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界展」が開催される。会期は9月21日~12月1日まで。 草花に彩られた女神のような女性と波打つ曲線。19世紀末パリの香りが色濃く漂うアルフォンス・ミュシャの版画は、多くの人の心をつかんできた。さらに、近年注目の高まる神秘的で荘厳なミュシャの油彩画は、画家としての奥深さを明らかにする。パリ時代の華やかな版画と、パリを離れた後に打ち込んだ油彩画。それらは、両者をひとつの視点から眺める機会がこれまでほとんどなかったため、まるで別世界のもののように語られてきた。 固定観念を取り払い、各々の作品を見れば、色やかたち、構図の作り方など、絵づくりの要素に共通点が多いことに気づく。つまり、版画にも油彩画にも、ミュシャと分かる強い個性が造形にあふれている。この造形を生み出す力こそが、私たちを惹きつけてやまないミュシャの魅力の核心と言える。本展では、版画の代表作と貴重な大型の油彩画、さらに素描や下絵も合わせて、ミュシャの魅力を余すところなく紹介する。 ミュシャのポスターが、当時の人々の心を捉えたのは、格調の高い伝統絵画の要素に、最新のデザイン感覚を組み合わせた斬新さがあったからだろう。 たとえば、人物には的確に陰影を施して立体的に描き、それ以外のモチーフは平面的にデザイン化している。さらに人物を太い輪郭線で囲むことで、全体の調和を図っている。 見どころは、ミュシャの造形の魅力を解き明かすものとして欠かせない下絵の展示。デッサンを重ね、試行錯誤を繰り返しながら「ミュシャらしさ」を生み出していったそのプロセスを、完成作と比較しながら鑑賞することができる。 ミュシャが初めて手がけた絵の仕事である本の挿絵。画学生時代に奨学金が打ち切られて生活のために始めた挿絵の仕事は、大切な原点であり、生涯続ける仕事となった。初期の代表作を、貴重な原画と合わせて紹介する。 また、ミュシャ人気の高い日本には、質の高いコレクションが数多く存在する。とくに、ミュシャの実息との深い信頼関係によって築かれたドイ・コレクションは世界的なコレクションで、《ハーモニー》《クオ・ヴァディス》といった大型の油彩画が含まれている。同コレクションが寄贈された堺市以外では公開機会のほとんどない、貴重な2点も展示される。 ミュシャが師事した巨匠画家、ローランスとコラン。 彼らは明治時代にパリに留学した日本の洋画家の多くを指導したことでも知られる。さらに、ミュシャから直接指導を受けた洋画家もいた。同時開催するコレクション展では、ミュシャと日本近代洋画の意外なつながりを鑑賞することができる。
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