限界迎える家族での葬送 増える「無縁遺体」、社会全体で再考を 「薄縁」時代㊦
総務省の調査では、平成30年4月~令和3年10月、全国で発生した引き取り手のない死者数は10万5773件。このうち5万5424件は遺留金がなかった。火葬などにかかった費用は故人の遺留金を充当できるが、不足分は公費支出が必要となる。「毎年見積もりを上回るペースで負担が増えている」と明かす自治体もある。
遺体の引き取り先を探す親族調査の範囲、火葬までの期間、遺骨の保管期間などに統一的なマニュアルはない。現場裁量に対応が委ねられる中、混乱も起きている。
名古屋市では令和4年に、引き取り手のない19遺体が最長で3年半近くにわたり、火葬されぬまま葬儀会社に預けられていたことが判明。引き取り手のない遺体の葬儀執行件数(生活保護受給者らを除く)は年々増加傾向にあり、同年度は256件に達したという。
問題を受けて同市は、火葬を終えるまでの期間を「原則1カ月以内」と決めたが、親族の意思確認などは思うように進んでいかないのも実情だ。
■「これまでの価値観で支えきれず」
厚生労働省は引き取り手のいない遺体・遺骨の自治体の取り扱いについて、年度内に現状や課題を整理し、参考事例を盛り込んだ報告書をまとめる方針だ。ただ、自治体からは、統一的な指針を望む声もあがる。
「すでに故人の葬送は『家族が担うもの』という価値観だけでは支えきれなくなっている」。淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は、こう指摘する。
核家族化と同時に、家族関係や地域のつながりの希薄化が進み、結婚をしない人や子供を持たない人らも増えている。結城教授は「身寄りのない高齢者は、今後さらに増えていくことになるだろう」と話し、続けた。
「葬送を『家族の問題』から『公共の問題』として捉え直し、支える態勢をどう構築していくかを社会全体で考えていく必要がある」(三宅陽子)