限界迎える家族での葬送 増える「無縁遺体」、社会全体で再考を 「薄縁」時代㊦
神社や寺が多く点在する名古屋市東区。葬儀社「セレモニー白壁」の入る建物の裏手には、遺体安置のための大型冷蔵庫が置かれていた。厚い扉を開くと、おびただしい数の棺が並べられていた。中に横たわるのは、引き取り手が見つかっていない故人たちの遺体だ。 【写真2枚】特殊清掃員がミニチュアで再現した孤独死の現場「イメージを変えたい」 同社の後藤雅夫社長(76)によると、遺体の多くは行政や福祉団体の依頼を受け、ここにやって来る。引き取り先がないか自治体が親族調査に当たる間、保管を担うことになるといい、「人によっては、数週間~数カ月かかることもある」という。 敷地内に置かれる冷蔵庫に収容できるのは13体まで。連日満室の状態が続くが、保管依頼は次々と舞い込む。「多い時には20体の安置が必要になったこともある」と後藤社長。入りきらない遺体は棺内にドライアイスを入れ、保管に努めている。 葬儀に親族は姿を見せないことが多い。同葬儀社のスタッフら以外、参列者が誰もいないこともあるが、僧侶を招き、故人を丁重に弔っていく。「生きている間はいろいろとあったのだろうが、最後は心を込め、送り出してあげたい」。後藤社長はつぶやいた。 ■引き取り手調査に年単位かかることも 身寄りがなかったり、親族がいても引き取りを拒否されたりするこうした「無縁遺体」は、墓地埋葬法などに基づき、死亡地の市区町村が火葬などを行うとされる。 自治体は警察や病院などから連絡を受けると、引き取り手を探すことになるが、その道のりは長く険しいものとなりがちだ。 親族は戸籍をたどって特定する必要があり、他の自治体から戸籍を取り寄せることもあるが、親族に文書で引き取りを打診するも返信がないことは少なくない。調査・打診は配偶者、子、親、兄弟姉妹、孫や甥・姪などに及ぶこともある。 だが、そこまで骨を折っても「疎遠であったことや過去のトラブルなどを理由に受け取りを拒まれるケースはある」(さいたま市の担当者)。千葉市では遺体の引き取りから2週間ほどで火葬となるが、その後も親族調査を行っていくといい、人によっては「年単位で作業が続くこともある」(同)という。 ■自治体に統一マニュアルなし