なぜドーピング騒動で名誉を傷つけられた井岡一翔はJBCの中途半端な公開謝罪を受け入れたのか…幹部2人は進退伺い提出も辞任せず
永田理事長は追求されている責任問題について浦谷執行理事と共に進退伺いを6月30日に長岡コミッショナーに提出したことを明かした。現在、外部の弁護士によって構成されている第三者による情報漏洩調査委員会が調査を行っており、答申が出される8月30日に理事会を開き、進退伺いの可否が決定されるという。 これまでかたくなに「これからの取り組みが責任。辞任はありません」と辞任を拒否してきた永田理事長が、一転、進退伺いを提出した。その理由を問われ「井岡さんと家族にご迷惑をかけた、こういう状況を招いた管理責任は私にあると思っている」としたが、あくまでも辞任は避け進退伺いに留まった。 「無責任に辞めることはできない。理事会で審議してもらいたい」 さらに「自分で判断できないのか?」と追求され「そうとらえてもらって結構です」と、開き直り「責任を取る」と言いながらまったく無責任な回答をした。 実は、この公開謝罪会見は、当初7月5日に設定されていた。会見ではWBC世界来生フライ級王者、寺地拳四朗の世界戦の発表と重なったからずらしただと、永田理事長が説明したが、本当の理由は違っていた。日本プロボクシング協会側から上申書への明確な返答がない状態で和解会見を行うことにクレームが入ったのだ。急遽、9日にJBCと協会の話し合いの場が持たれ、そこでJBCは永田理事長、浦谷執行理事の両名が進退伺いを出していることを明かし、8月30日に答申が出るまで待って欲しいと伝えた。協会側は、この問題の風化を狙う時間稼ぎだと反発したが、前理事長の秋山弘志氏が「必ず協会が納得する処分は出すので、そこまで待って欲しい」と約束し、その場は収まったという。 井岡サイドが上申書にまとめた4箇条の要求に明確な答えはなかった。進退伺いの可否は、理事会に委ねられるが、JBCのホームぺージによると理事会メンバーは13人で、当事者である永田理事長、浦谷執行理事、石田茂弁護士の3人が採決に加わらないにしても、残る10人中、日本ボクシング協会側の理事は2人だけで、永田理事長が顧問を務める東京ドームの息のかかった人間が4人も占めており、進退伺いが受理されない公算が高い。 ドーピングの検査体制の刷新についても永田理事長は「JADAには加盟できないが独自にそれに近いものにしたい」とし、専門検査官の育成や検体の冷凍保存、本人サインの必要などの具体案を口にしたが、「東京五輪・パラリンピックが終わるまで専門機関に相談できないので整備に年内いっぱいはかかる」という。 ドーピング検査体制の改善を永田理事長が口にしてすでに2か月が経過しており、専門機関に意見を求める時間はあったはず。今さらトップが、こんな抗弁をするのも組織として考えられない状況ではあるが、早ければ9月に行われる予定の井岡の指名試合には新しいドーピング検査方式が間に合わない可能性が高い。 「早く改善してほしいが、改善に合わせて自分が試合をやるというのは違う。安心して試合に集中できる体制にしてほしいけど、僕は試合に向けてやることをやるだけです」 この部分にも井岡は納得がいかない。