井岡陣営がJBCトップの退任求めて上申書…JPBAは独自調査方針
ボクシングの4階級制覇王者で現WBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(32)が所属するAmbitionジムが、潔白が明らかになったドーピング疑惑問題で不手際を続けた日本ボクシングコミッション(JBC)の役員退任などを求める上申書を全国のプロジムをまとめる日本プロボクシング協会(JPBA、花形進会長)に提出した。井岡は大晦日に行われた元3階級制覇王者、田中恒成(25、畑中)とのタイトル戦においてドーピング違反の疑惑をかけられ、JBCは、第三者で構成された倫理委員会に調査、審議を依頼。倫理委員会からの「検体の管理が悪かったため検体が腐り禁止薬物成分が生成された可能性が否定できない」「JBCに手続き上の瑕疵があった」などの答申を受け19日に理事会を開き「ドーピング違反はなかった。処分なし」との決定を行っていた。 その際、JBCは、井岡と騒動に巻き込まれた田中への直接謝罪と名誉回復を約束していたが、ここまで両陣営への納得のいく説明がなく、公式HP上に2度、謝罪文が掲載されたが、「責任なき謝罪」は、名誉回復手段に程遠いもので、井岡サイドは直接謝罪を拒否していた。 今回、所属ジムの木谷卓也会長名で出された上申書では「JBCは誠意ある謝罪も名誉回復措置も講じていない」と厳しく批判。 「選手が疑いも憂いも持つことなく試合に臨むことが現在のJBCの体制ではできない」とまで述べ、以下の4点を協会からJBCに対して要望書として提出することを求めた。 〈1〉JBC執行部の責任を認め、現役員が退任すること〈2〉個人情報がマスコミにリークされた原因を追及し明らかにすること〈3〉ドーピング規定を整備しドーピング検査を国際基準に準拠させること〈4〉井岡・田中両選手に対して誠意ある謝罪をし、名誉回復措置を講じること 実は、協会サイドも、今回のドーピング疑惑問題に関して、JBCの責任を問う声や疑問の声が協会内やファンの間から起きていることを問題視し、独自にJBCへ質問状を提出する動きをスタートしていた。 早ければ今日1日にも提出する考えを固めており、〈1〉今回の問題に関してJBCの責任をどう考えているか、また責任の所在がどこにあるのかの見解を聞きたい〈2〉JBCの諸問題について、普段、接点のない長岡勤コミッショナーと意見交換をしたいとの2点を質問状に盛り込むという。JBC幹部の辞任までを求めるものではないが、情報流出問題など、井岡サイドが上申書に記載している問題部分は、「JBCの諸問題」として、長岡コミッショナーとの面談が実現した際には問いただしたいという。 さらに協会サイドは、今回の問題を独自調査するプランも同時に進めている。 JBCが正規のドーピング手続きに従い、調査、審議を進める前に永田有平理事長が、警察にタレこみB検体を押収され、消失させた問題の経緯や、情報の流出問題。また第三者で組織されたとされる倫理委員会のメンバーの選出経緯が不透明で、一人だけ入ったドーピングの専門家とされる医師の名前が明らかにされなかったことなど、純然たる第3者のメンバー構成ではなかった可能性もあり、ドーピング問題の決着経緯にいくつかの疑念が残っているためだ。 独自調査をした上で、改めて問題点を浮き彫りにして、JBCの責任の所在や、今後の再発防止や、現在、JBCが進めているガバナンス委員会、ドーピング委員会の設置及び、アンチ・ドーピング規約の改定などに役立てたいという狙いがある。 もし協会の独自調査でJBCトップの永田理事長ら現幹部の責任が明らかになれば、「ここからのJBCの改革こそ責任を取ることになる」という論点のすり替えでは逃げられない。幹部が責任を取らない場合は、JBCの理事には協会からも2人入っており、理事会での解任動議を提出、決議を求める可能性もあるだろう。 永田理事長以下の幹部が、辞任という形で責任を取り、その“クビ”を差し出して、井岡、田中両陣営に謝罪して受け入れてもらうしか、今回の問題の出口はない。それをしない限り数々の不手際をしたJBCという組織の改革への一歩を踏み出せないということだ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)