故障懸念も待望J1舞台へ。なぜ52歳のカズはJキックオフカンファレンスに一人だけスパイクを履いてきたのか?
今月末には53歳になる現役最年長選手が、視線を落としながら思わず照れ笑いを浮かべた。 「みんなスパイクをもってきて(カンファレンスで)履くのかと思ったら、僕を除く全員がランニングシューズでしたからね。ちょっと恥ずかしかったです」 東京都内のホテルで14日に開催されたJリーグキックオフカンファレンス。今シーズンのJ1に臨む18クラブから一人ずつ選手が参加する開幕前恒例のイベントへ、13年ぶりに昇格を果たした横浜FCからは、同じく13年ぶりにJ1の舞台に立つ三浦知良が参加した。 「チームは非常にいい状態にある。開幕戦というものは本当に大事な戦いになるし、もちろん簡単な試合になるとは思っていません。勝利をつかめるように全力を尽くして戦いたいし、個人的にはメンバー入りして、神戸へ行く新幹線に乗りたいですね」 2001シーズンから4年半在籍した古巣ヴィッセル神戸のホーム、ノエビアスタジアム神戸へ乗り込む23日の開幕戦へ。他の選手たちと同じくユニフォーム姿で登壇し、横浜FCを代表して気持ちを高ぶらせたカズの足元では、クラブカラーの水色のスパイクが輝きを放っていた。 ヴィッセルを代表して参加し、カズとの初対面を果たしたスペインの至宝アンドレス・イニエスタをはじめとして、他には誰も足腰に負担のかかるスパイクを履いていない。その点を問われたカズは「気合いが入りすぎました」とはにかみながら、プロ35年目のシーズンへの誓いを新たにした。 「J1でもJ2でも試合への準備や、サッカーに対する気持ちはまったく変わらないし、いままで通りに自分のサッカーへの思いをピッチで表現していきたい。年齢的なこともあっていろいろな目で見る人もいると思いますけど、自分はピッチ上で全力を尽くしてチームのために戦うだけです。もちろんゴールも決めたいし、そのうえでチームの勝利に貢献していきたい」
プロになったブラジル時代は左ウイングとして成功を収め、1990年夏の帰国後は読売クラブおよびヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)、ジェノア、クロアチア・ザグレブ、京都サンガ、ヴィッセル、そして2005年7月に移籍した横浜FC、そして日本代表と常にフォワードで勝負してきた。 しかし、昨年5月にヘッドコーチから昇格し、横浜FCを2位に導いてJ1へ昇格させた下平隆宏監督が描く今シーズンの構想のなかで、カズの主戦場はトップ下となっている。就任後に指揮を執った天皇杯でもカズをトップ下で先発起用している指揮官は、その意図をこう説明する。 「あの年齢で、と言ったら非常に失礼ですし、僕が言うのもおこがましいんですけど、去年一緒にやってきたなかでポジショニングがすごくよくなったんですね。ボールキープや相手の間でボールを受けることも含めて、もっと、もっと上手くなりたいという意識がすごく高い」 基本布陣を[4-2-3-1]にすえるなかで、1トップ候補には人材がそろっている。加入後の4年間で78ゴールをあげているノルウェー出身の絶対的エース・イバ、日本代表経験のある皆川佑介に、昨シーズンに期限付き移籍先のサンガで17ゴールをあげた東京五輪世代の22歳、一美和成が保有権をもつガンバ大阪から期限付き移籍で加わった。 トップ下も柏レイソル時代にJリーグMVPを獲得したレアンドロ・ドミンゲス、勝負どころのラスト4試合で2ゴールをあげたアカデミー出身の齋藤功佑に加えて、昨夏の加入後はボランチでプレーしていた元日本代表の中村俊輔が、満を持して最も得意なポジションへ参戦する。 1トップと同じく激戦区となる一方で、シーズン中にレアンドロ・ドミンゲスが37歳に、俊輔が42歳になる。23歳になるホープの齋藤、そして53歳になるカズを含めて、ローテーションを組んで長丁場のJ1戦線を戦い抜く構想を下平監督は描いている。 「年齢が高い選手が多いので、コンディション的にいい選手が入っていくことで上手く回っていけば、と考えています。全員が同時にいいコンディションにならなくても、誰かがいいタイミングで入っていくかたちですね」