「大人を救うことが子どもを救うことになる」日本に救われたサヘル・ローズが考えるいじめと今できること #今つらいあなたへ
「頑張りすぎないで」――体が震えて吐き気が襲った9月1日
――ただ、中学校ではいじめも経験されたそうですね。 サヘル・ローズ: 中学校で引越しをしたのですが、外国人ということでいじめられました。日本人の生徒から見たら“自分たちとは違う知らない存在”だから、知らないことが恐怖を生んで差別に繋がっていじめに発展してしまったのだと思います。いじめてきた相手も決して悪者になろうとしていたわけではなかったのだろうと、今では思いますが、夏休みが終わって9月1日が来るのが私はすごく怖くて、体が震えて吐き気を催していました。 だから、今の子どもたちには「頑張りすぎないで」、「学校に行きたくなければ行かなくていい」と伝えたい。学校であなたの未来は決まらない。今の苦しみが今後のあなたを決めるんじゃない。もう一日生きるだけで、まだ出会っていない、出会うべき人に出会える。だから今の苦しみを無駄にすることはありません。
子どもを救うためにも、大人が救われてほしい
――今、コロナ禍で子どもたちの置かれている状況も変わってきています。 サヘル・ローズ: コロナによって、家庭内に問題があって虐待に苦しんでいる子どもも増えています。子どもって苦しくてもニコニコしてしまうところがある。声に出して助けを求めていないかもしれないけど、実は“モールス信号”でトントントンと叩いて、SOSを出している子どもがたくさんいるんです。モールス信号は、信号の読解力がなければ何を言っているのか分かりません。子どもたちの表情や様子を見て、それがどういったメッセージなのかをしっかり見ていかなきゃいけない。子どもたちが発するモールス信号に、周りの人たちが気づいてほしいんです。 そのためにも、私は大人にも救われてほしいと思っています。大人が孤独になってしまうのが、今の社会が抱える問題。大人が一人でストレスを抱えてしまい、そのはけ口になってしまうのが子どもたちなんです。だからこそ、いつもと違う様子の人がいたらその人が大人でも「どうしたの?」と声をかけてほしい。今、そんな“おせっかい”を焼いてくれる人が減っているように感じます。苦しんでいる人はすぐにSOSを出せないかもしれませんが、「気にかけてくれているんだ」「誰かの瞳に映っているんだ」と思えるだけで生きていけます。人の目を見て対話をしてほしいです。 私も30歳を超えてから、自分の生い立ちや傷、あらゆる経験とちゃんと対話できる時期が来ました。私たちの痛みというのは強みなんだと。痛みを持っているからこそ、人の痛みを理解できる。傷口は対話に変わるんです。 ----- サヘル・ローズ 1985年イラン生まれ。7歳までイランの孤児院で過ごし、8歳で養母とともに来日。高校生の時から芸能活動を始め、映画や舞台、女優としても活動の幅を広げている。芸能活動以外にも、国際人権NGOの「すべての子どもに家庭を」の活動で親善大使を務めている。アメリカで人権活動家賞を受賞。今後も世界中を旅しながら難民キャンプや孤児・ストリートチルドレンなど子どもたちと共に生きていくことが目標。 文:姫野桂 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)