EUROでスペインとイタリアが4強進出を決めた理由とは?
その上で死闘を繰り広げた、公式記録の上では引き分けとなるスイスへのリスペクトの思いを込めて、こんな言葉をつけ加えている。 「僕ならばヤン・ゾマーにスター・オブ・ザ・マッチを与えただろう」 精神的な支柱でもあるキャプテン、ボランチのグラニト・ジャカ(アーセナル)が累積警告による出場停止。攻撃の一翼を担うFWブレール・エンボロ(ボルシアMG)も前半途中で負傷交代し、同点に追いついた9分後の後半32分にはMFレモ・フロイラー(アタランタ)が危険なプレーで一発退場を宣告されたスイスの窮地を救い続けたのは、スイスの歴代ゴールキーパーで最多出場を誇るヤン・ゾマー(ボルシアMG)だった。 フランスとの決勝トーナメント1回戦では、PK戦の5番手で登場したFWキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)の一撃をセーブ。ユーロ史上で初めてスイスをベスト8に導いた32歳のヒーローは、一人少ない状況で戦った延長戦だけで3度もスーパーセーブを演じ、数的不利も何も関係ないPK戦にまでスイスを導いた。 「今大会でチームが成し遂げたことを、心から誇りに思う」 PK戦ではスペインの3番手、MFロドリ(マンチェスター・シティ)の一撃を阻止するも敗れたゾマーは、静かに敗戦を振り返った。東京五輪に臨むU-24スペイン代表にも選出されているシモンは、ともにゴールマウスを託される存在として心情をシンクロさせたのか。ゾマーの無念の思いを胸に刻みながら、頂点に立つ決意を新たにした。 「準決勝、さらに決勝で勝つために、今夜の勝利をすぐにリセットしなければいけない。すべての試合へ向けて、新しいメンタリティーを持たなければいけない」 ミュンヘンの地では4年前に喫したまさかの悔しさを糧に、負けないだけでなく、攻撃的なスタイルへと変貌を遂げてきたアズーリが2-1で“赤い悪魔”を下して雄叫びをあげた。 両チームともにスコアレスが続いた展開が一変したのは前半31分。直接フリーキックをきかっけにイタリアが攻め込み、一度は失いかけたボールをMFマルコ・ヴェッラッティ(パリ・サンジェルマン)が高い位置で奪取。ショートカウンターから最後はMFニコロ・バレッラ(インテル)が、ゴール左隅へ強烈な先制弾を突き刺した。 前半44分には自陣からカウンターを発動させ、左サイドから中央へドリブルで持ち込んできたFWロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)がペナルティーエリアの外から右足を一閃。鮮やかなミドルシュートで点差を広げ、守ってはベルギーの反撃を同アディショナルタイムに決められたFWロメル・ルカク(インテル)のPKだけに封じた。 「いつも練習してきたシュートが入って幸せだ。素晴らしいゴールだったが、今夜はチームの一人ひとりが素晴らしい試合をした。全員でつかみ取った勝利だと思う」