【令和の岩倉使節団】がアメリカで見たものとは何か?
『トップガン』のモデルに会う
水代 ニューヨークに行く前には中西部のオハイオ州に行きましたね。ここでは、オハイオ州立大学(OSU)のテッド・カーター学長と、デワイン州知事にインタビューをしました。私はカメラマンとして皆さんの取材風景を撮影させていただきました。 大城 素晴らしい写真をありがとうございました。誌面にも「YU MIZUSHIRO」のクレジットをしっかり掲載させていただいております(笑)。 OSUは、全米トップクラスのアメリカンフットボールの強豪校としても知られています。学長のテッド・カーターさんは元米国海軍の戦闘機パイロットで、映画『トップガン マーベリック』のモデルにもなった人というすごい人です。彼をヘッドハントしてきたのが、かつて『Wedge』でも連載し、弊社の書籍『Fail Fast! 速い失敗が未来を創る』の著者である藤田浩之さんです。 藤田さんは、早稲田大学を中退して、アメリカのケース・ウェスタン・リザーブ大学(CWRU)で物理学博士課程を修了し、その後、GE(ゼネラル・エレクトリック)などを経て、2006年に医療機器開発製造会社のQED(クオリティー・エレクトロダイナミクス)を創業し、成功した方です。2012年にはバラク・オバマ大統領の一般教書演説の際、大統領夫人貴賓席に日本人として初めて招待されるような、まさにアメリカン・ドリームを体現した人でもあります。 参考記事:『「この大学を守る!」 軍人出身の学長と、ある日本人の志(前編)』
アメリカの大学で存在感の薄い日本人
水代 OSUといえば、中国人留学生の数と日本人留学生の数の差に驚かされましたね。 大城 学生全体で6万5000人。その中で、外国人留学生の内訳は、中国人が約3200人に対して日本人が約40人でした。スタンフォード大学でも、学部生では10人にも満たない少数だと聞きました。アメリカ社会で、日本人、日本の存在感はどんどん低下しています。思い切って外の世界で勝負してみるということはもちろんのこと、リトルトーキョーやジャパンタウンの復活みたいことは、日本の政府も国家戦略としてサポートする必要があるのではないでしょうか。ロスのリトルトーキョーも、今はもう存続の危機にあるといいます。現地を見ましたが、人もまばらで、とても寂しい印象でした。 また、スタンフォード大学にも行きました。同大学の社会学部教授で、アジア太平洋研究センタージャパンプログラム所長の筒井清輝さんと、同大で客員研究員も務めた山本康正さんにお会いし、インタビューしてきました。 参考記事:『<スタンフォードから見たニッポン>百聞は一見に如かず 若者たちよ、もっと外の世界で勝負しよう!』 日本の歴史や文化などに興味を持つアメリカ人たくさんいるらしいんですが、アメリカの大学の中で日本のことを教える研究者、教授が激減しているそうです。一方で、中国はたくさんいるんですよ。これはかつてのように日本がアメリカにとって(経済的な)ライバル国でなくなった、という側面もありますが、アメリカ人の日本研究者、教授が減り、中国のことを教える人が増えるということは、自然と、アメリカ社会の中で中国の主張が通りやすくなることにもつながります。 やっぱり外に出ることは大事で、日本のプレゼンスを高めていくことが必要です。取材中に聞きましたが、日本のエリートは、有名な名門高校を出て、有名な大学を出て、有名な一流企業に勤めてる。その中って、居心地がいいじゃないですか、ただ、みんな同質で、同じような土壌で育った人ばかりと付き合っていては、世の中がどんどん狭くなっていく、世の中が見えなくなっていきますよ、と。その通りだと思います。アメリカの強さは本当の意味で「多様」であることです。